空想&妄想小説~妄想デート・ドライブ編~

 

ご注意

※ これから出てくる人物名や名称、出来事や空間的なことなど、
  100%架空のものですので予めご了承下さいませ。

 

季節は初夏…
目覚めの良い僕は5時に起きて、
愛車の真紅のスポーツカーを磨きこんでいた…。
そこで、ふと、
隣にある親父のグレーのセダンが気になりだす…

時間になったので、愛車のキーを握り締めたが、
今日は、親父の車を借りることにした。
気まぐれってやつかな…。

ちょっと遠出をしたかったので、
待ち合わせはAM7:00。
残業続きの彼女には悪いと思ったが、
今回のデートは2カ月ぶりだから、
勘弁してもらおうと思ったのだ。

しばらくすると、
彼女の家が見えてきた。
高台にある大きなお屋敷だ!
正門の前に白いワンピース姿と、
小ぶりな麦藁帽子がまぶしい娘が立っている。

そう、彼女が僕のガールフレンド。
名前は「伊集院 エリカ」
バリバリのお嬢様だ!

「おはよう!」
『??あっ!オッ、オハヨ~ 車が違ったから解らなかったわ~』
助手席のドアを開け、彼女がシートに滑り込んだ。
「しゅっぱーつ!」
CDやステレオなんて
この車にはついてない。
だから、お話が弾むんだよね~
それに、この日のために買った青いサマージャケットは、
真紅のスポーツカーより、こういうおじさん車のほうが似合うのだ!

『今日はどこに行くの?』
彼女が聞く…
「僕のお勧めの、いい所さっ!」

山梨方面に向け高速道路に車を走らせた。
いつもの小さなスポーツカーより、
親父の車はゆったりしていて、ラクチンだ!
とりあえずいつものように
朝食に彼女の手作りサンドイッチを口に運び、
笑い話で御坂インターを下りる。
そのまま河口湖大橋を渡り、山中湖まで一気に走り抜けた。
湖面の反射するまぶしさと、
彼女の横顔に目を細め、
洒落たオープンカフェで休憩。
アイスココアとアップルティーをウエイターに頼み、
青空と白い雲を上に、
湖面に浮かぶ釣り船を背景に、
そして、
白いテーブルの正面には、
ステキな彼女が…
「し・あ・わ・せ なんちゃって~~でへへへ」(妄想中)
そんな僕を見て、彼女は
『何、ニヤニヤしてるの??』と聞いた。
「あっ、いやいやいろんなこと考えてたからさ、あははは・・」

お店が混み始めてきた。
休日だから、どこもカップルでいっぱいなんだ…
レジサイドで売っていた山中湖限定ポッキーを一つ買い、
また僕らのドライブは始まった。

♪カーラジオから流れる曲は、
ちょっと懐かしい80年代の青春グラフティー
なにげに口ずさんだりして…、
また、その頃のお互いの思い出なんかを話したりして…
初夏の風を窓いっぱいに入れ、
緑の香りで深呼吸。
御殿場のアウトレットタウンを横目に箱根方面へ車を向ける。
フェラーリ博物館にも寄ってみたいのだが、
僕の彼女はそんなに言うほど車に興味はない。
それどころか、
運転も下手だ!
以前、彼女の助手席に乗って悟ったことがあった。
交通事故に遇わない努力をしようと・・・
高速道路での追い越しのタイミング、
街中では内輪差を考えずハンドルを切る人・・・
こういう運転手の近くには寄り付かない事が
事故に遇わない一番の方法だとね。
・・・そんなことを思い出してしまった。

箱根山入り口に
おいしい鉄板焼きのお店がある。
ここのランチは絶品だ!
お肉も柔らか、野菜もバリバリ、ワインも渋い!
しかし、
時計の針は11時。しかもまだお腹も減ってない。
「ここ美味しいんだよね~」
と話だけで通り過ぎてしまい、
彼女はちょっと不機嫌に…
????
この不機嫌な理由は2つある。
一つは、話だけで終わってしまった事。
二つ目は
どうして、このお店を知っているのかという事と、
その時誰と行ったのか?という事。
いつものように、
得意な想像力と妄想の世界で、
ネチネチとあることないことを作り出し、
しばし、険悪な時間が流れる。

そうこうしている内に、
箱根の芦ノ湖に着いた。
「海賊船に乗ろう!」
と声をかけたが、彼女は相変わらず
黙ったままだ…。
遊覧船乗り場に着くと、
タイミングよく出港時間5分前。
僕は、彼女の手をとり
甲板の最後尾へ行った。
出航するときは
みんなは前に行きたがるが、
こういうときは、逆に後が穴場なのだ。
何の穴場か???
陸が離れていくのがしっかり見えて、
人気が少ないからね…
手を繋ぎっぱなしでも、迷惑をかけないんだよ!
しかし・・・
しょせん、僕も一般人。
最後尾も人でいっぱいだ・・・
それでも、ここぞとばかり
彼女の手を引いて
一番良い所に行ったのだ!

甲板上にある売店で、海賊サンドとビールを一つ買う。
ローストビーフが入った香ばしいホットドックだ!
湖と山の風に乗って
彼女の髪がなびく…
ワンピースのスカートも絵に描いたように
フワフワとして、リゾートが良く似合う。
海賊の衣装を着た船長と三人で記念写真をとり、
そのまま少し話をしているうちに、
意気投合し
中の機械室を案内してくれる事になった。
一般は立ち入り禁止区域だ!
僕は、なぜか、こういう機会に恵まれている…
僕達だけの特別なこと、ってことに。
船長室から見る景色もまた
違ったものに見えた。
乗組員用のお茶をご馳走になり、
2人はかなり満足!
船長から、
「あそこに見える、白いレストランがあるだろう!
今日のランチは絶対お勧めだよ!!」
と聞き、後で行ってみる事にした。

あと少しで航海も終わりに近づいた時、
丁寧に御礼をしたあと、
また甲板に出た。
あの有名な「タイタニックごっこ」もしたかったけれど
考えてる事はみんな同じで、
順番を待つように誰もが同じようにタイタニックごっこをしていた…
『私達はやめようね…』と、彼女が言った。
内心、それをやりたかった僕は、
ちょっぴりガッカリ…。(ああ~小市民)

さわやかな遊覧船の旅は、これで終了。
いつのまにか、彼女の機嫌も治っていた。

しばらく元箱根街を歩き、
あのレストランに行った。
湖面に突き出したその建物は、
雰囲気も最高!
ウエイトレスに
海賊船の船長から紹介されたことを告げると、
にっこり微笑んで、
特別な席に案内してくれました。
湖に突き出した一番の先端。
芦ノ湖を手に入れたような気持ちになる場所。
デザートをメインにしたランチセットは、
食事は少し、デザートたっぷりってもので、
彼女は大満足!
子羊の骨付きカルビは柔らかく、
イースト菌のにおいがする焼きたてのバターロールも、
ソースに良く合い、
当然野菜スープも美味しい~。
デザートのケーキセットは15種類あり、
選ぶのが大変だ…
僕はアップルパイにバニラアイスクリームをトッピング。
そしてアメリカン珈琲を、
彼女は…結局迷っていて、選ぶことが出来ず、
お店の方に
特別にお願いして5種類をいただくことにした・・・。
目の前でケーキにデコレーションするパテシエの姿は
華麗で見事な演出でした。
ケーキをニコニコパクパクと幸せそうに食べる彼女を見て、
今日は、誘って良かった…と思う僕でした。

お腹がいっぱいになり、
少し散歩する事にした。
150年以上前に天然石で作られたという遊歩道を歩きながら、
湖面を眺め神社にお参りし、
コケの匂いに歴史を感じ、
ちょっと大人っぽい雰囲気のなか、
ゆっくり歩き、
2人の時間を楽しみました…。
手をギュッってしっかり繋いじゃったり、
縁結びの神様の前でしっかり拝んじゃったり、
子宝の仏像とか、しっかり摩っちゃったり、
おみくじ引いたら大凶で
えーんえーんって泣いちゃったり、
他のカップルの写真とってあげたり、撮られたり…
湖から吹く風もさわやかそのもの。

時計の針は
3:40
「そろそろ帰って行こうか…」
箱根を後にし、
山中湖に向かう…
夕日を見るのにはまだ早かったが
そこは気分でどうにでもなる。
山中湖に沈もうとしている揺らめく太陽を見て、
これからの2人のことなんかを語り合ったり…

長野県を目指し、車を走らせる・・。
車内のBGM♪は夕暮れに良く似合う
外国の曲だ!
洋楽と世間は言うが、
僕は「外国」というのが好きだ!
ベンツやポルシェを見て
「おお!洋車だっ!」って言う人はいない・・。
やはり外(ガイ)なのだ!!

などと、どうでもいい事を一人で考えていると、
ヘッドライトをつける時間になっていた。

助手席の彼女はお休み中…
そんな可愛い姿を見て、一人ニヤつく僕でした。
小淵沢インターを下りて、清里方面へ…

『う、う~んごめん・・寝ちゃった…
もお~~起こしてくれればいいのに~~今どこ?』

満天の星空を見せたかった僕は
清里スキー場を目指していた。

PM7:45
初夏とはいえやはり高原。
涼しい風が吹いている…
僕は自分の匂いのついたジャケットを彼女に掛け
車から下りた…
天然大プラネタリウムの星空は
輝かしい光を放っていた。
彼女を包み込むように抱きこみ
一緒に時の流れるのを過ごした…
流れ星も時々見えて、幻想的。
そんな2人の間には、余計な言葉はいらない…
必要なのは
一緒に居たいと思う気持ち。
しばらく、ロマンチックな時間がながれた・・・。

突然、彼女が口を開いた。
『トイレ行きたい!』
「えっ?ええええ~~~そりゃ大変だあ~」
慌てて車に乗り
清里駅方面を目指す。
コンビニが在ったので、そこを利用する事にした。
WCだけじゃ悪いから
コーラと紅茶を買った。

最終目的地の家を目指すちょっと切ないドライブタイム。
オートマチックの車ならではの
お手手つなぎでず~っと・・・
離れるのを惜しむかのように
強く握り返す二人でした…。

最後の赤信号で、お別れのKISS…
「一日振り回しちゃったネ…疲れたろ?」

『ううん、楽しかったわ』

ラジオから♪ムーンライトセレナーデ♪が流れる…
それじゃ、また

ステキな夢を…

おやすみなさい。

 

( 第一話 完 )