先輩の仕事。

当店では、オーバーホールや改造の依頼が、沢山あります。

高級なスポーツ自転車から、一般車(実用車)まで、何でも来ます。

特殊な事も多々ありますので、知恵を絞って、

大なり小なり一台一台に様々な事柄を施しています。

 

先日、30年~35年前の運搬車(実用車)の”レストア”をしたのですが、

分解中に、ある部品を見て、ちょっと感動(嫉妬?)してしまいました。

ヘッドランプを取り付けるアダプターです。その先に、数センチの部品が付いています・・・。

なんと、手作りです・・・。(穴が丸くない、削った箇所が斜め)

おそらく、その自転車を組み立てた(販売した)店主か、修理をした職人が施したのでしょう。

ランプを取り付ける時に、どうしても、適正な位置が出せなかった為に、

この部品を作り、取り付けたのだと思われます。

(全体の写真が無いので、皆様には解らないかも知れません。ごめんなさい)

ランプの位置(高さ)しかも、2センチ程度の為に、

鉄板を切って、穴をあけて、ヤスリをかけて・・・

 

「・・・凄いじゃないかっ!」

 

この仕事を、誰がやったのかは解らないし、それはどうでも良いのだが、

自転車屋さんは、その昔、このような細かいことを普通にやっていたのだと思います。

現在のように、部品が沢山販売されている訳でもなく、

何を持って適正・・・という事もなく、手間とか勘定とかも抜きにして

大事なことを追及していたのでしょう。

それが何なのかは、正しくは解りませんが、おそらく

一人一人のお客様と、向き合っていた のだろうと思う。

作った部品の精度や価値・・・という話ではなく、

「お客様(使い手)の為」を思って、ヤスリをかけたのかと思うと、

胸が熱くなった・・・。(>_<)

 

時が流れて、実用から趣味の部類に在る自転車・・・。

今でこそ、扱う対象(商品)が大きく変わったが、

この部品に込めた”見えぬ先輩”の魂に、共感(共鳴)した店長でした。