先日、フロントディレーラー(変速機)取り付け部の改造を・・・
とお話しましたが、今日は、詳しく解説します。
ある高級なブランドの自転車ですが
フロントギヤを変速させる部分に、問題が発生しました。
①直付け部品が、グニャグニャと曲がり、変速が上手く出来ない。
②力を受け止められず、その結果、締め付け部面が滑って削れてしまった。
上記2点の問題が重なり、”トラブル”が起きた事に気付きました。
※(削れてしまうっていうのは実に珍しいです・・・)
これは、何度も締めて、何度も滑って・・・この繰り返しが
削れてしまった原因だと推測します。
カーボンフレームの構造上、デザインが自由自在に形成できる事により、
フレームに直接付けられる「直付けタイプ」の台座が多くなった今・・・。
しかし、その部分(内部)の強化が未熟だと、根元からフニャフニャとしてしまい、
上り坂などでは、トルクを抜かずにギヤチェンジをすると、
今回のようなトラブルが発生し易くなる・・・特有の問題であるのだ。
これを「特有の問題」として捉えるのか、
逆に「そういうものだ」と理解するのか・・・ 意見は分かれるが、
高山個人的には、「大きな問題である」と思っている。
※(問題として捉えない場合もある・・・これは後半(一番下)で説明します)
その為、この問題点は以前から各社に指摘しているのだが、
まず改善される事は少ない・・・。
田舎の無名なショップが、どーのこーの言っても、「はあ?」程度である。
さらには、クレーマー扱いされちゃうからね。 (笑)↓過去の記事より
http://www.takayamacycle.com/?p=2884
その為・・・というか、ユーザーマニュアルにも一部記載されている場合もあるし、
そもそもユーザー(ライダー)のテクニック(使い方)としては
「ギヤチェンジ時にトルクを抜けば良いだけ!」の事だけである。
そう!たった、それだけの事だが、それが納得いかず、また、
そこに不満を持つからこそ、この度、タカヤマサイクルに相談に来た訳だ。
・・・そうか
「よし!任せろ!!」・・・(また安易に受けてしまい、大苦労するのだ)
今回は、このような流れから、”改造物語”が始まるのであった。
まずは、ドリルで「♪バビュ~ん」とリベットを削り取り、台座を外した。
ここに、直付けバンドを巻き付けようと考えたのだ!・・・だが大きな問題もある。
上記に書いたように、カーボンの形成自由というから、
このフレームもパイプが丸ではない。一見、丸パイプに見えるが
上下の太さ、左右の形状など、複雑な形で作られているのだ。
つまり、
バンドが付けられない訳だ。(どーする?)
※バンドは、丸パイプのみ取り付け可能であり、
異型フレームには全く対応していないのだ・・・。
最初は、このバンドを削って、何とか合わせれば良いのでは?という、
単純なアイデアは持っていたのですが、大きな大きな問題に出会う・・・。
思った以上にフレームが複雑な形状の為、
一旦、”挫折”・・・頭を抱える事になった。
翌日、改めて作業開始~。
バンドを2種類使えばどうだ?!という”ひらめき”が降りて来た!!
”SM-AD67”という商品を使用。サイズはMとLの部品をミックス。
まずは、この部引を分解し、強引に前後をくっ付ける。(にこいちにする訳だな!)
内径31.8と34.9mmという、異型になる所がポイントとなるのだ・・・。
ある程度まで、フレームに干渉しないように、やすりで削る・・・。
削ってはフレームに合わせ、また削っては合わせ・・・(地味な作業60分・・・)
毎度の事であるが、作業を始めてから、「ちょっと後悔」を思うのですよ。
「私はもの凄い効率の悪い仕事をしているし、成功する保証もない・・・。
もしも・・・もしも失敗したら、
お客様の大事なフレームが使い物にならなくなっちゃう訳です・・・。
これって、だれの責任!? ・・・俺じゃん。・・・どうするんだよ、自分・・・。」
などと深夜にも関わらずブツブツ言いながら、やすりを持つ手は動き続けるのであった・・・。
緩衝する場所が無くなればOK!
次は、複雑な流線形のフレームに、バンドが密着する為の必殺技を施す。
硬化パテ(金属並に硬くなる粘土)で隙間が無いようにするのだ!
※(パテ作業の写真がありません。ごめんなさい)
この日は、これで作業終了・・・。
作業開始から3日目(実際に作業しているのは数時間程度だが・・・)
スペシャル・バンドが完成したぞ!(上写真)
良く見ると、複雑な形状が解るはずだ。この形状が大事。
塗装後、実際に、フレームに取り付けて、動かしてみると~「OH~\(^o^)/」
「シュパシュパッ」っとギヤが変わるぞ!! どーだ!やったぜ!
隙間が全くない(写真)。バンドがズレる事は無い!これってすごく大事!!
また、絶対にフニャフニャしない(歪まない)ので
DURA-ACE(Fメカ)本来の性能が発揮されるはずだ。 あ~良かった!!
お客様も喜んでくれるであろう~!(きっと・・・)
勢いだけで受けてしまった今回の改造・・・。
結果的に、上手くいって良かった~。いやホント、良かった良かった・・。
さて、
このような作業ですが、
良く知っているお客様だからこそ・・・・
自分の店で販売した商品だからこそ、
手間の掛かる、効率の悪い仕事でも、喜んで受けさせていただいております。
複雑で、途中で投げ出したくなっても、お客様の顔が浮かべば、
作業に気持ちと力が入ります。
メーカーが何て言おうが、当店で販売した以上、受けた以上、
お客様の希望に近づけるように、やり抜かなければなりません。
部品の集合体である自転車の「最大能力を発揮させる!」
それだけの事です。
タカヤマサイクルを信じて、購入してくれたお客様と、
信じて改造を任せてくれたお客様には、私はその気持ちを倍にしてお返し致します。
様々な感動をプレゼントが出来るのであれば
大変嬉しく思います。
話は変わりますが
レストランの料理人は、来店されるお客様に「美味しい!」と思って(食べて)貰える為に、
たくさんの手間をかけて作るのです・・・。
ただ、それだけの為に、何時間も仕込むんですよ・・・。
はあ~「お金を払う以上、美味しくて当たり前じゃん!」という
お客側の一方的な見解もあるが、それを踏まえたうえで、真心を込めて作ります。
評価される事は少ないけれど、料理人(職人)は手抜きをせず、ただ作ります・・・。
それに比べたら、当店のやっている事なんて、大したことは無いが、
お客様の顔が見えるからこそ
というワードは、すごく大事な事だと思う・・・。
皆様はどう思いますか?
付録 ※ ~~~今回の指摘場所は問題か問題ではないか?~~~~~
この「Fメカ直付け台座」の歪み(フニャフニャ)の問題は、
業界ではタブーとされている。
フニャフニャしないものなど、無いに等しいからだ。
こんな事を言っていると、販売なんて出来なくなるし、購入する事も怖くなってしまう。
だから、言わない事がベターなのだ。
カンパニョーロやシマノがどんなに素晴らしいFメカを作ろうが、
この取り付け台座の処理が不十分では、
全くその性能が発揮される事は無いのである。
しかし、ライダーはテクニックを利用し、瞬間的に”力”を抜いて、
フニャフニャで歪みがあっても、上手くチェンジしている(出来ている)。
だから、大きな問題にもなっていない。・・・これが現実だ。
実際に、皆様も、困った事など無いのではないだろうか!?
それに、きちんとした販売店から購入している皆様は、
店主やメカ二ックから、この歪みのある事や、そのテクニック(使い方)を
直接聞いているはずだからだ。
まして、カーボンフレームに乗る(買う)という、ベテランライダーは、
こんな事は聞かずしても、解っている人が多いので、やはり問題にはならないのである。
話が変わるが、
高価な自転車をインターネット通販で買った人が来店されるケースが多々ある。
調子が悪いとか、ギヤチェンジが上手く出来ないとか、単純なトラブルだが、
それに”対応出来るスキル”がユーザーには無く、結果ショップに来店される訳だ。
多くの自転車に見られるのは
ケーブルの取り回し、長さ、調整不足のオンパレード状態・・・。
驚いたのは、ビンディングシューズの使い方も知らず、(知らずに購入)
そもそも、どうやってギヤチェンジをして良いのか分からない・・・
「空気って入れるものなのですか?」・・・という人も居ることだ。
私は思う。・・・お客様はライダーであり、メカニックでは無い。
だから、安全に乗る事だけに集中すれば良いと思っている。
それ以外はショップを頼るべきだと・・・。
だから、このお客様は当店に(何かのご縁があり)来店された。
私は、・・・自分の与えられたショップという立場から、受け入れたが、
本来はというか、そういう買い物は間違っているように思うのだ・・・。
はあ~?「安く売っているから買う。それの何が悪い!?ショップなら、
誰にでも公平に対応しろ!この殿様商売バカが!」
と言われそうだが、
あえて言うなら、「・・・悪くは無いが、良くはないでしょう~・・・」
だって、通販が良ければ、ショップに来店することなど、不要な訳ですから・・・
全国にある専門店は、”通販”のお手伝いをしている訳ではありませんし、
ただの”便利屋”でもありません。
”ショップを利用する”という意味を、
大きく勘違いされているのではないでしょうか・・・?
趣味の商品とは、いろいろな対話や説明や指導があってこそ深くなっていくはず。
架空の通販ショップと、私達プロショップの差は、たったこれだけです。
そう、「これ」に気が付けば
どちらが有利でどちらが自分に合っているのか、自然に解ると思います・・・。
皆様は、どちらの方ですか??
自転車に限らず、全ての商品に言える事ですが
目の前の金額が、良く無い(悪い)方向へ進んでいるように思えて心配です。
今回は、ちょっと大きく重く言ってしまったが、
私の心を、聞いていただきました・・・。
次回は、楽しいお話しにしますね!ご期待下さい。