空想&妄想小説~大人の世界編~

ご注意

※ これから出てくる人物名や名称、出来事や空間的なことなど、
  100%架空のものですので予めご了承下さいませ。

 

ハ~イ!
オイラの名前は赤岩哲司。36歳。妻子あり。趣味は音楽鑑賞にドライブで、
休日は家族で買い物をしたり日曜大工や子供と遊んだりという
極普通の成年男子。自称愛妻家。
時々スポーツイベントにも参加する程度に運動もたしなみ、
また時々二日酔いになるくらいにお酒も飲みます・・・。

明日は、以前より計画を立てていた大イベント!
「秘密の旅行」なのだ!「イエ~イ」
まあ~特に誰かに秘密にする必要は無い?のだけれど、
なんとなく、そういうオープンじゃない旅行もあるわけです・・・。
風呂上りに、テレビでの天気予報をチェック!
「うん!明日は晴れだ。ラッキ~。V」

磨きあげたお気に入りのビアグラスにライトビールを注ぐと
CMのように綺麗で細かい泡が立ち、
明日の旅はうまく行きそうな予感を感じさせた・・・。
窓を開けると空には星が瞬き、ワクワク気分全開~っ!
「早く明日にならないかなあ~~~」
おおお~っと!もうPM11:30・・・もう寝なくちゃね!
明日は早いのだ。ワクワクワク。

オヤスミナサイ・・・
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

AM6:00バッチリ目が覚めた!
昨日吟味した服装で武装し?待ち合わせ場所に向う。
今日は計画に計画を重ねた一台イベントなのだ!
「ウッシシシシ・・」

「皆様、おはようございますっ!
今日はすばらしいお天気に恵まれて・・・
それでは2日間多いに楽しみましょう~!」

そうなのだ。今日は、会社の慰安旅行なので~す。
そして僕はこの旅行の「幹事」なのだっ!
慰安旅行でも仕事の出張でも、
特別な事と思えば楽しいし、家族以外の人と出かけたり、
デート?と考えれば気持ちが違うしね!
実際、会社の複数の女性(男性も多いが)とはいえ、
女房以外の女性達と出かける・・・という行為には、
間違いない・・・。
これをデートと言ってしまう自分もどうか?と思うが
それはそれで良いのだ!うん。誰にも迷惑かけないしね・・・。

さっそくバスに乗り込み、いざ出発。
目的地は海辺にある温泉&遊園地施設・・・
年輩者から若者まで誰にでも楽しめる総合レジャーランドです。
観光バス3台を連ねて走ると、
学生時代の修学旅行のようなワクワク感があって、浮かれちゃう!
ついついハイテンションになっちゃって・・・。

天気は最高!青い空に白い雲、高速道路を流れる景色の色も眩しい・・・。
みんな楽しそうだ!車内に持ち込んだビールやお酒もどんどん減って、
これから先、どうなっちゃうんだろう?というくらい笑い続けた。

「赤岩君、今日は良い場所を選んだね!さぞかし悩んだろう・・・
今回は童心に返ったつもりで思いっきり羽を伸ばさせてもらうよ。
今日は無礼講じゃ!ウォッホッホッホ・・・。」

同じバスに乗っている我社の社長である。
今日は会長が居ないからか、ずいぶん伸び伸びしている様子だ・・。

「ありがとうございます!社長に気に入っていただき嬉しいです。
さあ、一杯どうぞっ!」
そういって、また缶ビールをプシュっと開けてコップに注ぎたしたのでした・・・
(これで部長に昇格か??そんなわけない・・)

確かに旅行の場所を選ぶ時は、かなりのエネルギーを使ったのだ・・・。
もちろんどこの会社の誰でも、こういう時は大変なのだけれど、
幹事という大役を引き受けた以上、全力で取り組むのが僕の主義なのだ!
周りの同僚や上司、知人にまで、どこが良いかな??なんて相談して、
ようやく今回の場所に決定したのだが・・・

じつは、
この場所を決めた最大の理由は、
社内のマドンナである憧れのA子さんが、
「私、遊園地に行きたいな・・・」と言ったからなのでした。
何でも、遊園地に行ったことはあるのだが、
思いっきり遊んだ・・・と言う記憶が無いらしい。
ここはプレイボーイの?オイラです。おもわずピンと来たわけですね・・・。
「彼女の小さな夢を叶えてあげよう・・・」ってさ。

この彼女は僕の2つ年上で、バリバリのキャリアーウーマンタイプ。
美人モデルのように容姿が整い、誰もが憧れちゃうくらい眩しい人なのです・・・。
だから、正面からはなかなか見る事も出来ず、
「うっ・・・綺麗だな・・(赤面)」って感じで、
社内の男性陣からは憧れの的なのです。
でも、憧れようがどうしようが、
妻子持ちのオイラ達としては、どうするという訳ではなく、
また、A子さんにも立派なご主人様やかわいい子供も居るから、
目だけで恋をしているというよくある話です・・・。
それでも、憧れちゃうんだから、困ったもんです・・・(アタシも含めて・・・)

しかしまあ~そんな時!誰がどう決めてくれたのか?
うれしい事に今回この旅行の幹事を、
このマドンナA子さんと僕の二人でする事になり、
超ハッピーだったのだ!
この2ヶ月の間はとても楽しい毎日でした。(ああ~神様ありがとうございます)
周りの男どもからはヤキモチを妬かれ、羨ましがれたが、
「仕事だからね~役得よ!あはは・・」と言って
楽しくて嬉しい事をちょっと自慢してたオイラでした・・。

実際、時々会社の帰りに彼女と喫茶店で
旅行の計画を話し合ったりして、
ちょっとしたデートみたいで すごく楽しかったし
社員食堂で一緒にご飯食べていても、
誰にも何も疑われず楽しいお話が出来たのは、
幹事という役柄であったためでしょうか・・・
今回そんなことで、オイラ達は急接近。いつでも仲良く過していたのだった。
「ああ~こんな女性もステキだな~」な~んて、
そんな事を思ったりしたりもしてみたしね・・・。
(俺って恋多き男かな?)
またどうもオイラは、2人の共通点を探したがる性格で、
ちょっとした癖や、考え方が合うと
「俺たちって相性ピッタリじゃん!」な~んて、口にして、
どこかで彼女を口説いていたりしてたし、
個人的には、とにかく楽しい時間を過ごしてきたのだ・・・。
そう、いろいろと・・・いろいろと・・・。。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

PM12:30  目的地の温泉&遊園地施設到着!

さっそくフロントにて部屋割りを確認して、みんなにカギを渡し、
これからの予定を伝えたりするのでした・・・。
若い人達はプールや遊園地に、
年輩の人はとりあえずお風呂へ行ったりと、
おのおの小さなグループに分かれて楽しい時間を過ごしていました。
とりあえず、僕はホテルのロビーで1人で静かに珈琲タイム。
これからの日程の確認と会社に残っている社員達へのお土産の手配。
それに今夜の宴会場の設定と、その時に飲む上司の好みのお酒の予約・・・
さらに二次会になるスナックとカラオケバーとボーリング場。
それからコンパニオンさんに渡すチップの準備・・・ETC
そんな雑用も幹事の仕事です・・・。

PM2:40。ようやく仕事が終わり、
僕もゆっくりすることにした。
ホテルの中庭に大きな噴水があり
時々風に呷られて水しぶきが飛ぶ・・・
どうってこと無いその光景がとても眩しく
久しぶりにゆっくりとした時間が流れるのを感じ、
得意な空想と妄想の世界で、かなりメルヘンチックな事を想像し
一人楽しんでいた・・。

その時、僕の携帯電話が鳴った・・・。
(着メロ曲♪涙のカノン)

『今何してますか?』

A子さんからの電話だった・・・。
彼女も幹事であるから、本来ならば一緒に
先程の雑用をしなければならなかったのだが、
僕はあえて、彼女には頼まなかったのだ・・・。
せっかく、遊園地に来たのだから楽しんでもらいたいし、
彼女の希望した「遊園地で思いっきり遊ぶ」という行為を
純粋にしてほしかったからね。
それに、雑用なんて仕事はオイラだけで十分!
彼女にさせたら男が下がるぜ!(なんちゃって・・・)

しかし、A子さんは遊園地には行かず、
このホテルの横にあるにアウトレットモールで
ぶらぶらしながら、そこのカフェでお茶を飲んでいたらしいのだ・・・。
(つまんないの~~)
話を聞けば、彼女の友達や同僚は38歳です。
プールや遊園地に行って、キャーキャーするほど若くないし、
だからといって、昼間から温泉に入るのも・・・と言う事らしい。
ぜ~んぜん気にする事ではないと思うのだが?
(精神年齢が低いと普段から言われているオイラだからそう思うのかな・・・?)

そこで
「それではこれから、僕と一緒に遊園地に行きませんか?
二人で大騒ぎしましょう!」

僕はそう言って、彼女を誘った・・・。
電話の向こうで彼女は戸惑っていたが、
しつこく(無理やり?)誘うオイラに負けて
A子さんはOKしてくれました。

(カタチとしては夢に描いたような、二人のデートが始まるのだった・・・。)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

遊園地の北ゲートで僕らは待ち合わせをした・・。
「お待たせ~!さあ~どこから行こうか?」
彼女はパンフレットを見ながら、
『う~ん、ここも行きたいし、あそこも行きたいし・・・』と悩んでいた。
普段の彼女は、バリバリの仕事人間。
テキパキと指示を出し、効率の良い仕事をする姿しか見ていなかったので、
遊園地の乗り物に悩む彼女を見ていたら、とても親近感を感じる僕でした・・。
結局、悩んでいても結論が出ず、
とりあえず、近くに在るものから乗っていく事にした僕らでした。

よっしゃあ~!!「時間の許す限り行きましょう!」
そう言って、僕は彼女の手をとって走りました。
ほんの一瞬だったが、手を握った瞬間、彼女がビクッとするのを感じた・・・。
もちろん僕だって、それなりに勇気が必要だったし、
昨日までこの旅行の事で極普通に話はしていたんだけれど
手を触れたのは始めてなのだ・・・(カァ~赤面)

僕らは人ごみを掻き分け、
ジェットコースター、観覧車、ゴーカート、メリーゴーランド、コーヒーカップ・・・etc
途中、大きなアイスクリームも食べたっけ・・。
たくさんお話もしました。
会社のこと、友人のこと、家族のこと、昔のこと、失敗したこと・・・
A子さんという人が決して雲の上の人でない事を確認しながら
僕らは楽しい時間を過ごしました
手をつないだりしている事も、極普通に感じてきた頃、
僕の♪携帯電話♪が鳴った・・・。

「・・・・・・・解りました。すぐ行きます。」

そろそろ宴会の準備に行かなくちゃ・・・。
とても短いデートだったけれど、
すごく楽しい一時でした。
彼女も楽しい時間を過せたと思います。
僕らはゲートを出てホテルに向かいました。
横に居る彼女の目が、なんとなく淋しそうに見えたのは、
気のせいかな・・・?

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

PM7:00
大宴会が始まった。
100名以上の社員をまとめるのは大変です。
司会&雑用係りの仕事がまた始まりました。
社長の挨拶、乾杯、宴会芸の順番やビール運び、
座る間もなく、セコセコと働く僕でした・・・。
しかし、あまりにも忙し過ぎて、事がうまく運ばず、
自分にイライラしていた時、
「私も手伝いましょうか・・」とA子さんの声が・・・。
本来ならば、彼女には手伝ってもらうつもりも無く、
この場もゆっくり友人達と楽しんでもらおうと考えていたのだが、
「おっお願いします!」とついつい言ってしまったのだ・・・。
とりあえず、彼女には飲み物を配る仕事をしてもらいました。
空いたビール瓶を下げて来て、新しいビールを持って行って、
時々上司達にお酌して、また空いた瓶を・・・。
飲んで騒いで、ステージの宴会芸もどんどん続き、
社長の民謡と田中部長の腹踊り、
山崎係長の手品、若い女の子達のジャズダンス・・・
連続90分間の出し物は異様な雰囲気の中、また異常な盛り上がりも見せた・・・。

PM9:20・・・ようやく宴会終了。
後は、各小グループに分かれて別々の二次会へ・・・。
僕らはホテルの人と一緒に後片付けをして、
全てが終わったのがPM10:00
何だか、大きな仕事をいた後のような充実感と言うか、
達成感があって、気分は満足満足!(Vサイン!)
僕と彼女はヘトヘトになって、とりあえずロビーのソファーに座った。
これでとりあえず、僕らの今日の任務は終了!
後は個人的に楽しむだけだ・・・。

同僚や友人たちは、カラオケスナックに行ったり、
温泉に入ったり、プールに行ったり、
深夜まで営業している遊園地に行ったりして、
各々に楽しんでいるようだ。

「さてと、これからは自由に楽しみますかっ!」
と僕は口に出して立ち上がった・・・。

しかし、目の前にいるA子さんは、何処にも行こうとせず、
目を伏せて座ったままだ・・・。
疲れたのかな?

「友達と一緒に楽しまなくて良いのかい?せっかく旅行に来たんだからさあ~」
と彼女に尋ねてみた。
すると、
黙ったまま、微妙な笑みで 顔を横に2回ほど振り、小さくため息をついた・・・。

『?????・・・。』(どうしちゃったんだろう、かなり疲れているのかな?)

さっきまでの、遊園地での楽しそうにしていた彼女とは、まったく別人のように
元気が無く、暗い感じがしていた・・。
(こういう時、気の利いたセリフの ひとつでも言えればカッコいいんだけど・・・。)

とりあえずロビー脇にある売店にて、栄養ドリンク「ロボナミンXYZ」を2本買い、
1本を彼女に手渡した。

そして、
「疲れたときは、これが一番!
腰に手をあてて、斜め30度を見上げて、グイっと!」
僕は喋りながら、また慌てて飲んだため、噎せ返ってしまい、
「ゲホゲホ・・・」

それを見て、彼女はようやく笑ってくれた。
「大丈夫?! そういってハンカチを渡してくれた・・・

(ティッシュじゃないのが嬉しいよな!ハンカチだよハンカチ!
しかも いいにおい!)

『よ~し、私も飲んでみよう~っと。腰に手をあてて、こうやって、ぐいっと・・・』
・・・@#%&#?¥!・・・。
彼女もコンコンコンっと噎せててしまった。

なんだか、可笑しかった。
小さいことだけど、共通の出来事に、ちょっと嬉しい僕でした・・。
一緒に居る事がすごくいい気持ちで、
もうちょっと同じ時間を過ごしたいと思った僕は

「これからどうしますか?何か予定でも入っていますか?」

と彼女に尋ねてみると、

『ううん。何もないわよ・・・。』

「だったら・・・縁日に行きませんか!」

『縁日?』

「遊園地の中の{アヒル通り}が縁日みたいになってるんですよ!
ほら、あそこに見えるでしょ!」
そういって、窓際を指差した。

『いいけど・・・』

「だったら、すぐに、行きましょう~!」
僕はさりげなく(本当か?)彼女の手を取り、ぐいっと引っ張った。

さすがは国内でも絶賛される総合レジャー施設だけあって、
遊園地もナイター営業だ!
それに夜の遊園地はイルミネーションがなかなか綺麗・・。
メリーゴーランドやジェットコースターもキラキラしている。
ゴーカートもUFOが飛んでるみたいだ!
(お化け屋敷は・・・。薄暗くて本物が出てきそうで気持ち悪そうだな。)

縁日会場で、ボンボン釣りや金魚すくい、射的や輪投げを楽しんだ。
彼女と僕はキャーキャー言ってゲラゲラ笑って、
とても楽しい時間を過ごしました。
ライトアップされたメリーゴーランドにも乗っちゃったし・・。
まるで王子様とお姫様のように・・・大きな白い馬に、それも二人きりで。
(えへへ・・)。
小さな夢の中の様な世界ではあったが
温かいものを感じていた僕でした・・・。
そして、A子さんが、僕の彼女ではないという事の悔しさも、
同時に感じていたのでした・・。
彼女は、どう思ってるんだろう・・・?ひょっとして!?
イケナイ、イケナイ!また勝手に妄想してしまった。バカな僕。

ふと、そこに泣いている子供を発見・・。
どうもパパママと迷子になったらしい。
僕らは迷子センターまでこの子を連れて行くことにした・・。

彼女のつなぐ手は僕からこの子供に変わってしまい、
ちょっと、悔しい・・・(ああ~俺って心が小せえ~~)
でも、二人の歩く後姿を見て、
胸がキュンと温かな気持ちになりました・・。

迷子センターに行くと、この子の両親が居た・・。
何はともあれ、無事にパパママのもとに戻れて良かった良かった。
これも何かの縁・・・輪投げの景品でもらった”クマのぬいぐるみバック”を
子供にプレゼントし僕らはその場をあとにした・・・。

振り返ると、そのカバンを嬉しそうに背負った子供が
手を振っていた・・・。
A子さんはその子供に、
『まったね~!』と大きな声で応え

『う~ん・・当然の事とはいえ、良い事をした気分よね!』

彼女はポケットから 指サイズの小さなマスコットを取り出し、
『これを、私の勇気のしるしにしよう!』と言って
ポシェットに付けた・・。

それは、さっき二人で射的場にて獲ったものだった。

僕は胸が苦しくなるのを感じた。

気が付いたら、もうシンデレラタイム。
ナイター営業も終了する時間・・・。
僕らはホテルに戻ることにした。
今日の楽しかった事などをお喋りしながらホテルに向っていた・・。

その時、
”♪・・・・・・・”
彼女の携帯電話が鳴った・・。
そして電話の相手をチラッと確認した彼女は
「先に行ってて・・」と言い、その場から逃げるように暗闇に消えていった・・。
不思議に思った僕だったが、
深く考えないようにしようと
心の中で「日曜日よりの使者」を唄った・・。
「シャララ~シャラララ~♪」byハイローズ

ホテルに戻り、僕は1人大浴場に行く事にした・・。
せっかく温泉に来た訳だから、
お風呂も楽しまないとね!
しかも、ここのお風呂は、スパ施設になっているから
遊園地気分でワイワイ楽しめるのだ!
まずは大きな「千人風呂」で体を伸ばし、リラックス。
洗い場では体をスポンジに石鹸をつけ泡だらけにしてブクブクブク・・・。
汚れも(臭いも?)スッキリこん!
深夜とはいえ、さすがに巨大レジャーランドの大浴場。
まだまだ多くのお客様で賑わっていた。
ワイン風呂、岩風呂、サウナ、酒風呂、ハーブ湯、
深底風呂、滝風呂、清流風呂、洞窟風呂・・・・ETC
時間が足りない~~。
いい汗を流し、リフレッシュした僕は、ルンルン気分で風呂から出た。
部屋にもどり、一息ついていると、
テーブルの上にメモがある事に気が付いた。
「地下のスナック竜宮で飲んでるから、急いで来い!待ってるぞ。」
同僚からの伝言だった。
「おいおい・・・今、もう1時だぜ・・・」と思ったが
このまま1人で寝るのもつまらないので、僕もスナックに行く事にした・・・。

廊下でエレベーターを待っていると、我社の専務「柴田さん」がやって来た。
聞けば、いままで、部屋で仕事をしていたのだ。
来週予定されている海外での事業計画書を製作していたらしく、
ようやくプライベートタイムになったそうなのだ。
そこで専務は最上階にある高級ショットバーに行くらしい・・。
(俺はカラオケスナック・・かっこ悪いな)
この柴田さんは43歳という若さで専務職に着任。
海外事業部にて大活躍し、その経験から、
外資系大手企業とも連携をとり、
数年で我社を一流企業にした敏腕専務なのだ。

柴田専務は以前の会社で
ニューヨーク支局、サウジアラビア支局、韓国支局を経て、日本に戻った。
その直後に我社の会長である「ゴッドファーザー」に引き抜きされ、
この3年間で専務にまでなった。
僕らの知らない裏で
海外の企業の買収も考えているといううわさも・・・
(人間が違いすぎます。)
しかも独身!
容姿は完璧。車はポルシェ。趣味はテニスとヨット・・・
やっぱりすごいです。
会社の女性は、みんなこの柴田専務に恋をしてしまうのです・・。

そんなすごい人なんですが
なぜか、こんな僕のことを、何かと面倒見てくれるのだ・・・。
先日は海外出張にも同行したし、
重要会議であるにもかかわらず、
僕をアシスタントにつけたり、
段取りの仕方や、交渉の仕方も教えてくれたり
休日も静岡の別荘の招待され、ヨットで釣りをしたり
ポルシェも貸してくれるし
時々、お酒もご馳走してくれるし・・・・。
柴田さんはお酒が入るといろんな話をしてくれるのだ。
それで最後は必ず
”君はもっと上に来るべき人材だ!”
な~んて、うれしい事をいってくれたりします・・・。
そんな、兄貴的存在の柴田専務なのだ。

「やあ!赤岩君…どうだ。一緒に飲まないか?今日は連れが居るけれど・・」

『あっ、せっかくですが・・・、同僚達が地下で待っていますので・・・』

「そうか、残念だな。ではまた一緒に語ろうか。」

そういって別々のエレベーターに乗り込み、その場を後にした。

地下のスナック竜宮に行くと、案の定、みんな大騒ぎをしていた。

「おお~!赤岩。遅いぞお!よし、みんなでもう一度乾杯だ!
カンパ~~イ!」

ビールグラス片手に、ゲラゲラの大騒ぎが またはじまった。
職場では大人しい部下の女の子も、楽しそうにカラオケを歌っていたり、
普段話が出来ない者も、こういう場があることで仲良くなれるし、
旅行って良いよなあ~
そんなみんなの笑顔を見て、嬉しい僕でした。
カウンターで1人、おつまみの野菜スティックを齧っていると、
「おいおい!赤岩~。今日は本当にご苦労~!」
そう言って同僚が近寄り、ビールを注いでくれた・・・。

「しかしよ~マドンナA子さんと一緒に居られたお前は
実に羨ましいぞ!ちっきしょ~」

そうかな?そうだよね!確かに、こんな事でもなけりゃ、
絶対知り合いにはなれないもんね。

でも、気になることがあったのだ・・・。
もちろんA子さんの事だ。
さっきも携帯電話を見て、コソコソしてたし・・。
実は旅行の打ち合わせをしていても
時々ああいう事が在ったし・・・。
誰にも知られたくない何かが、彼女にはあるのだ。
最初は、不思議というか、おもしろ半分で捉えていたが
A子さんという女性を知るにつれて
この2ケ月間で
彼女の知らなくてもいい事まで、見えてしまったのだ・・。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

以前彼女は別の会社に勤めていた。
そしてその社内に真剣に愛した男性が居たのだ・・。
もちろん男性もA子さんの事を愛していた。
お互いに激しく想い寄せ合う仲になり、
表面上の軽い言葉だけでは表せない、深い間柄になった・・。
しかし、その男性は仕事の関係で、外国支局に転勤になった・・・。
「付いて来て欲しい」とその男性は願ったが
その頃まだ、若かった彼女は、外国行きを拒み、
そのまま、二人の関係も終止符を打ったように見えた。
しかし、その男性のA子さんへの思いは変わらず、
彼女の事を一時も忘れずに居たが、
ある時、彼女が結婚する・・・と聞き、
男性は、彼女の幸せを願い
それまでの想いと彼女の思い出を捨てたのだった・・・。

それから数年後、A子さんは新たな会社で仕事を始めた。
以前と違うのは
現在は家族を持っているということだけだ。
しかし、まったく生活感を感じさせない美しい
《キャリアーウーマン》の彼女に
誰もが憧れと尊敬の眼差しを送っている・・・

そして、
日増しに美しくなっていくA子さんの秘密・・。
それは、ご主人以外の”男性の影”があったのだ。

普段はハキハキとしている彼女が、
時々コソコソしている時は、その男が絡んでいるのだ・・。
今夜の遊園地での携帯電話も、そいつが相手に間違いない・・・。

実は、その男のことを僕は良く知っている・・・。
ズバリ言って「柴田専務」なのだ・・・。
そしてこの柴田さんこそが、
以前A子さんが、真剣に想いを寄せた人であるのだ。

世の中狭い・・というけれど
時間が流れても、違う地の・・それも違う会社で
偶然に出会った二人・・・。
これは運命?って、感じても不思議じゃない。うん。

そういう2人です・・・日々顔をあわせている為か、
お互い昔の想いがよみがえってしまい
再びHOLE・IN・LOVE。
時々隠密の出会いをしている仲なのだ・・・。
世間ではこれを「不倫」と言って
大騒ぎしたり、また時にはドラマチックに言ったりもするのだけれど
あまりにも身近で起こった出来事だけに、
僕は、複雑な気持ちだ。
(それも、憧れのA子さんと・・・チクショー)

実はさっき
柴田専務が最上階のバーに行ったのも、
A子さんと会う為だったのだ。
偶然を装い「会う手はず」だった事は
僕にはお見通しだったさっ!・・・下手な芝居しやがって!
柴田専務は完全犯罪が出来ないタイプの人だな・・・
(俺もそうだけど・・・)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

『赤岩~お前の好きなギネスもらってきたぞ!』

モンモン考えている僕に、同僚が寄って来た。

『な~に湿気た顔しちゃってるのお~?アハハハ~~
このビールの泡立ち、キレイだなあ~~アハハ~~
きれいって言えばさあ~A子さんきれいだよなあ~~
いいよなあ~お前。アハハハ~~・・・。
そうだあ!赤岩~いつもの歌ってくれよお~~!』

そうなのだ!
A子さんの事なんて・・。そんなことは、どうでもいい・・・。
今は仲間と一緒に、楽しむのだ!!うん。

「赤岩哲司~、歌を唄いま~~す!!
ナンバー#48769806お願いします!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

AM2:00ようやく部屋に戻った僕は、ベットに入り眠りに付こうとしていた。
同じ部屋の同僚はもうすでに、夢の中だ・・・。
あ~~明日は家族にもお土産を買って行かなくちゃ行けないしなあ~
子供にはお饅頭っていう訳にはいかないから、やっぱり玩具かな??
温泉&レジャー施設の雰囲気のある玩具・・・そんなの無いよな・・。
そうだ!ペットボトルに温泉を汲んでいこうかな・・・
それを家のお風呂に入れて気分だけでも・・・
それなら、入浴剤のほうが良いかな・・。
などと実にどうでもいいような事を、真剣に考えてしまうのであった。
さらに、今日一日在った楽しい出来事を思い出して、
ニヤついたり、ため息をついたり、
1人いろいろな妄想で?わくわくしていた・・。
そうこうしているうちに、
自然にまぶたがふさがり、ウトウトし始めようとしたその時、
僕の携帯電話が鳴った。

「・・・・・・・・。」

A子さんからだった・・。
僕は慌てて着替え、彼女の元に向った・・。
彼女の電話の声は、僅かに震えていた・・・それが
涙声に聞こえたのは、気のせいだろうか・・・・?。
だからと言って、今僕が彼女に会って、何が出来る訳ではないけれど、
そんな僕でも、彼女が頼りにしてくれる以上、それに応えたい・・・

いや
そんなことじゃない・・・
じっとしては居られない理由は
僕の方が彼女に会いたかったからなのだ・・。

そう、彼女に対して何もできない事なんか、解っている。
でも、でも、でも
心と体の一部の部品でもいい・・・
彼女の何かになれるなら・・・と、
僕はそれを望んでいた。

α館とβ館をつなぐ渡り廊下に彼女は待っていた。
海が一望できるこの展望廊下は、昼間は広く明るく、賑やかなのだが
夜のせいか、今はなぜか、やけに長く淋しく冷たい
「ただの通路」にしか感じなかった。

白いブラウスと黄色い長いスカートを身にまとった彼女が
廊下の隅に見えた。「A子さんだ・・・」
近づく僕の気配を感じた彼女は、何か慌てたように(気のせいか?)
手を後ろに組み、首を少し傾けてこちらを見た。
僕は近づき

『ど、どうしたの?』と小声で彼女に声をかけた。

「うん。別に、どうしてるかなって思って・・・迷惑だったかな・・・
ごめんね。呼び出しちゃって・・・」

『どうしてるかな?って、全然迷惑じゃないけど、何かあったんですか?』

僕がそう尋ねたが、
彼女は黙ったまま、窓の外を見ていた・・・・・・。

僕は何をして良いのか、また何を話したら良いのか、まったく解らなかった。
しばらく沈黙の時間が流れた。やけに月が眩しい時間だった。

そう感じたのは
涙を流している彼女を見てしまったからだろうか・・・。

窓から眺める景色は変わらず月が眩しい・・・。

突然、

「夜の海って、綺麗だよね・・・キラキラしていて・・・」

黙り込んでいた彼女がポツリ言った。
そういう彼女の目は、まだ涙が溢れていた・・。

『・・・・・そう、だね。』
僕はそう言って、長い大きな指で彼女の頬の涙を拭った・・・。

彼女は、ちょっとためらいながら、
「ありがとう・・・・・赤岩君はいつも優しいね」

『そうですか・・・。?』

「ねえ、私って、最低だよね・・・」

『えっ?何が、どう最低なんですか?』

「知ってるくせに。いけずな人ね・・・」

『柴田さんの事ですか?』

「ほら、知ってるじゃない・・・」

『・・・・・そうですね。あまり褒められる話じゃないですね・・』

「そう・・・だよね・・・」

『今も遇っていたんでしょ!?楽しかったですか?』

「そう、でも無いかな・・・」

『まあ~僕には関係ない話です。もちろん誰にも言いませんし。』

「言ってもいいよ・・・。これで終わりにしたから・・・」

『はあ~????終わりですか??』

「そう、終わり、全てが今日で終わったの・・・」

『・・・・・・・・・。』

「柴田さん、結婚されるんだって・・・」

『そう・・・そうですか・・・それで、終わりにするんですか?』

「うん。終わり・・・」

『・・・結婚されるなら、仕方がないですよね・・・
いいタイミングと言えば、そうとも言えるかもしれませんね・・』

「・・・”お互い真実の愛に生きよう”って言ったのにウソだったの・・・」

『えっ?真実の愛ですか・・?』

「以前、彼と約束したの・・・
お互いに、真実の愛を貫いて生きようって・・・」

『真実の愛ですか・・・?ステキですね。』

「再びめぐり合えたのに・・・
今度こそ正面からぶつかって行かれると思ったのに・・・」

『でも、結婚してしまうんじゃ仕方がないですね・・・』

「そっ。明日から私はまた、あの時と同じように愛を捨てるの・・・。
あ~スッキリしたっ!あはは」

『・・・・・・!!(怒&悲)』

「何?怖い顔してるの・・?」

『そういうの、キライです!不倫している事がどうこうじゃなくて、
愛を捨てたとか言って、下らない理由をつけるような事が、すごく嫌ですね!』

「あなたに、何が解って?」

『そりゃ、本人ではないですから深い所は解りませんが
そんな話いっぱいあるはずです・・。
初恋の人と結婚できない・・なんて、極普通じゃないですか。
それに、A子さんだって、結婚してるじゃないですか・・。
柴田さんだって、A子さんが結婚されると聞いた時は、
かなり悔しかったと思いますよ。

「それ、どういうことよ」

『A子さんの事を、誰よりも良く知っていた柴田さんですよ・・・
愛に生きようって約束したのに、
”別の男性と結婚する”と聞かされた・・・。
でもそれが
A子さんが新たに見つけた真実の愛ならば
ただの悲しみで終わったでしょうけれど、
それが、彼の近くに居る事が出来ず、
《一人で居る淋しさから逃げる為の結婚》だと知った時、
柴田さんの心は
悲しさと悔しさで辛かったとおもいますよ・・・。』

「・・・・・。」

『自分が一番愛する女性に、
一番やってほしくなかった、”心にウソをつく事”・・・。
お互いに、”真実の愛に生きよう”って、誓ったのに、
”愛を捨てて生きる”なんて・・・
そこまで追い込んでしまった男としての失態に、
さぞ悔しかったでしょう・・・』

「だったら、柴田さんは なぜ私にそれを言ってくれなかったかしら・・?
今まで一緒に居て、いちども話してくれなかったわ・・
今頃そんなこと聞いたって・・・」

『それが言えなかったから、今に居たっているんでしょう~?
あなたを・・A子さんだけを外国の地に迎えるつもりで、
柴田さんは1人で頑張っていたんだ・・。
でも、その国の治安だとか、安心な生活だとか考えていると、不安だったから
いつまでもあなたを呼びつける事が出来なかったんですよ・・・』

それに・・・あなた達以外の他だって、家族を持つ誰もが、きっと、
同じように誰かに恋をしてしまう事もあるでしょう~
お互い、後ろ髪をひかれながらも・・・それでも
その人を求めてしまう事はあると思います。
それは、それでしょう・・・。

不倫とはいえ、
そんな、ステキな時間を、
一番愛している人と一緒に居られたのに・・・
ふたたびめぐり遇って、以前の関係をとりもどしたのに・・。
お互い気持ちをさらけ出して、話し合えたはずなのに・・・
上手くいったら、本当に”真実の愛を貫く”事が出来たかも知れないのに・・・
あなたは柴田さんの事を、何一つ理解出来ていなかったんですね・・・』

「そんな、都合のいい話、信じない・・それに何を根拠にそういうこと言うの??」

『俺は同じ男ですから、柴田さんの普段の行動を見ていれば、
それくらいの事 解ります。』

「はあ~?一緒に居た私には解らないわよ、そんなこと・・・」

『そこですよ・・・一番理解して欲しい人に、
理解してもらえなかった柴田さんは、かわいそうだなあ~』

「・・・・・・。」

『だから、結婚して、こういう関係を終わりにしようって言ったんじゃないですか?』

「・・・・・・。」

『本当に愛している、A子さんを大切に思えば
今の生活を・・・そう、結婚しているご主人や子供のこと、
それからこの先の事も
柴田さんは大切に考えているんですよ・・・
A子さんの持っているものを全てを
愛してるんですよ』

「・・・そんな事、考えてほしいなんて思ってないわ・・」

『A子さん・・・少しは素直に・・・柴田さんを正面から見たらどうですか・・・?』

「彼が、本当に、そう思ってくれてたとしたら・・・私って 馬鹿みたいね・・・」

『柴田さんの行動に・・・出した結論に、
A子さんのように自分の感情に取って付けた様な、
悲劇の主人公を気取った理由をつけるのは、どうですかね・・。』

「はっきり、言うわね・・でも、私にはそうするしかないのよ。」

『僕自身、モテる男ではないので、いつでもフラれる立場でしたが、
どんな時も”愛を捨てる”などとは考えませんでした・・・』

「それはあなたが真剣に恋をした事が無いからよ!
本当の悲しみを知らないからなのよ・・」

『ハイハイ、なんとでも言って下さい・・
かっこ悪くて、不細工で 要領も悪く 幼稚で単純で、
女性の気持ちなんて全く解らないバカな俺ですが
相手に・・たかが自分の気持ちが受け入られなかっただけの話であって
”好きなんだ!”という気持ちは、誰にも邪魔されてませんから・・・。
決して後ろめたい事はないです。
それと、
本当の悲しみを知らないって言いましたけど(怒)
本当だろうが、ウソだろうが 大きかろうが、小さかろうが
悲しいものは悲しいのですよ。その悲しさは ドンと受け入れますっ!』

「ふっ・・・・。それが力に変わるの?そして今のあなたがあるっていうわけ?」

『力???馬鹿なこと言わないで下さい。そんなこと、
”過去に積み重ねた大切な思い出”を借りるまでもありません。』

「それじゃ、何をどうしてたら、良いって言う訳?」

『・・・・そうですね。全て認めて、笑い飛ばしましょう~!・・・』

感情だけの下らない会話が続いたが
答えも出ない話である事は彼女自身解っているはず・・・。
なのだが、誰かに話を聞いて欲しかったんだろう・・。
結論から言って、この2人が別れるのは正しい事なのだ。
今ならば、当人達以外は誰も傷つけずに済むのだから・・・。

しばらく沈黙が続いた・・。

「ごめんね。私 赤岩君と居ると、安心できるの・・・。
ちょっと子供みたいな赤岩君だけど、
何でも一生懸命に、楽しそうにやっている姿を見ていて、少し憧れていたんだ・・・。
きっと、赤岩君なら、さっきみたいな事を言ってくれるんじゃないかと思って、
呼び出しちゃったの・・・。
弟みたいだけど、頼りになるって言うか、
ムキになって話すから、かわいいって言うか・・。」

『・・・・・・・。』(あ~~ぁ 何を言い出すかと思えば・・・)

「柴田さんの事は、もう1年以上前から、終わりにしようって思っていたの・・・。
でも、あの頃の新鮮な気持ちが忘れられなくて・・・。
でも、時間が流れすぎたのかな・・・?お互いに思いが変わっちゃったみたい・・・。
結局今日まで、ズルズル来ちゃったんだ・・・。
何か、理由でもつけなくちゃ、終止符が打てないのよね・・・。
さっき、赤岩君が言ってくれた事、ガツンと来ちゃったよ・・・。
そうなんだよね。彼の事を理解しようなんて考えなかったわ。
私には主人と子供が居る・・・だから、
柴田さんとはどこかでガードラインを引いてたし、
でも、あの頃の新鮮さも欲しくって・・・
そんな事も、柴田さんには、見透かされてたのね・・。」

『一般論で言えば、
ご主人や奥さん以外の人を好きになって、
不倫の関係になる人のほとんどの人が、
新鮮な気持ちを求めてるんですよ・・・
誰もがね・・・』

やっぱりA子さんはステキな人です。
そういう弱い一面もある事が解って、ちょっぴり嬉しかった僕でした。

僕は・・少しは、彼女の役に立てたのかな???
でもA子さんに大きく嫌われたかもしれないけれど
彼女の何かになれたはずだ・・・

もちろん、これ以上何も言うつもりも無く
僕にできることは、お話を聞いてあげる事、
そして、一緒に居てあげる事だけなのだ・・・。
(と言いつつ、けっこう、きつく、たくさん言ってしまったが・・・)

時計の針は、もうAM3時をまわっていた・・・。
もう少しで、東の空が明るくなる時間だ。

僕は、小刻みに震える彼女の手をとり、
非常階段から外に出た・・。
岩場に打ち付ける大きな波音が、耳に飛び込んできた。

彼女の心には
僕なんか映ってはいない・・・おそらくこの先も・・・
そんな事を考えると
せつなさだけが目に沁みるのでした・・・

突然
”ぎゅっ”と力強く握り返してきた彼女・・・?

『ん?どうしたの???』

「離さないで・・・」

彼女は小さくつぶやいた。

ずっと手を握ったまま、ゆっくり海沿いを歩いた僕たちでした。

遠い地平線の向こうから、ステキな朝日が昇ってきそうな気配が
今までの重い気分をさわやかにした・・。

「ところで・・・さっきの言葉・・・赤岩君も新鮮な気持ちを求めて、
最近 誰かに恋をしたの?」

何を言い出すかと思ったら・・・
(落ち込むのも早いが、立ち直りはもっと早いA子さんだなあ~・・・感心、感心)

『そ、そりゃ、恋してますよ・・・いいじゃないですか!?』

「ふ~ん・・・赤岩君も、そういうことあるの?したの?」

『そういうことって、不倫ですか?」

「そうそうそういうこと・・」

『いえいえ、とんでもない!
いえ・・やっぱり・・してますかね・・妄想だけですけど・・・』

「どんな人?きれい??年齢は???」

『うう~~~・・・』

しつこく聞いてくる彼女でした・・・。

僕の気持ちは「A子さんに決まってるじゃないか!」と
大きく叫びたかったのですが・・・やっぱり言えない僕でした・・・。
そりゃそうだ!
だって、さっきまであんな話をしていたんですよ・・
正義感ぶって、カッコいいセリフを言っておきながら
どうして、いまここで言えますか???
それにそれに、
そんな事、彼女に言って、何がどうなるというの???
絶対、言えないよ!
ええい、こうなったら、適当な事 言ってやるう~~。

『じ、実は受付やってるS子さんです・・・』

「・・・な~んだ。てっきりアタシだと思ったのになあ~・・・」

そう言われて、ドキリとしてしまう僕でした・・。(ヤバイ、焦・・・)

『ち・が・う・の~?』

下を向く僕の顔を覗き込むようにして、『クスっ』と笑った・・

「う~・・・・・・。」
何も言えない僕でした・・。(A子さんの意地悪!うう・・)

『今日は、本当にありがとう~』

そう彼女は言って、モジモジしている僕のホッペにキスをしてくれた・・・。
(エヘへへ・・・赤面)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

『おはようございます!
皆様、昨夜はゆっくりお休みになられたでしょうか??
お話に聞くと、徹夜で飲んだり騒いだりしていた人も居られるようで・・・』

PM8時 朝食の時間に僕は挨拶をした。
旅行2日目のスタートだ!
一睡もしていない僕は、目にクマが出来ていた・・。
寝不足から、ちょこっと体が振るえ、気だるさが残っていた。

見渡すとみんなが、なにやら、ひそひそ話をしていた。
同僚の話を聞くと、夜中に誰かと誰かが、
コッソリ逢引(デート)していたというのだ・・・。
えっ!?マジかよ!(と言いつつ、焦ってしまう僕でした)
ヤバイな、渡り廊下での出来事を誰かに見られたかな??
まてよ?夜の縁日のことか??ううん。これは恥ずかしい事ではないし、
同僚達も縁日にて一緒に極普通に見ていたし、
やっぱり、深夜の出来事か???

思わず、遠目でA子さんを見てしまう僕でした。
でも、良く考えてみると、
もし、僕らが見られていたとしたら、
この事をはっきり同僚が自分に伝えてくれるはずはないな・・・。

と、なると、う~ん・・・
はっ!?柴田専務とA子さんの事がばれたのか???
妙な緊張感が僕の中を走った・・・。
柴田さんを目で探したが、この会場には居なかった・・。
人っていうのは、
ここに居ない人のことになると
ガンガン言う習性があるものだ・・。
やはり、あの2人の事か・・・。

A子さんがかわいそうだ・・。何とかしなくちゃ・・。

頭の中でいろいろな事を考えては見たが、
名案はまったく浮かばず、
モンモンとしていた。

熱々だったお味噌汁が冷たくなった頃、
突然、
「赤岩!社長がどこにも居ないぞ!」と柴田専務が走りこんできた・・・。
えっ???社長が???

そういえば、居ないな。っていうか、社長だから
朝はゆっくりしているもの・・と思い込んでいたから、
不思議に思っていなかったけど、
居ないのか・・・?どこに行ったんだろう???

僕は
「お風呂じゃないですか??」となにげに言って見たが
早朝からホテルの方も一緒に探したのだが、
どうも居ないらしいのだ。
話を聞けば、朝6時30分に社長の部屋に来るように
柴田専務は指示を受けていたらしいのだが、
その時は、もうすでに居なかったらしい・・・。
ベッドの寝具も、まったく使用した様子もなく
昨夜から、部屋に戻っていないらしいのだ・・。
携帯電話も、部屋に置きっぱなしで、
どうも、これは大きな事件に巻き込まれたかもしれないな・・・。
全員で探すのは大事になるので
とりあえず、社員数名で館内を手分けして探そうという事になった。

みんな慌しく、部屋を出て行った・・・。

僕はその場に残りホテルの人と相談をしていた。
「最悪の最悪は、警察に・・・」と

そして今日から親友になったA子さんと一緒に
社長を探しに行こうと思った矢先、
A子さんの同じ部署の女の子が申し訳なさそうに来た・・・

「あの・・・実は昨日、深夜0時近くに、
社長に良く似た人を遊園地で見かけたんですけど・・・」

”えっ??????。”

「それで・・・実は友人の伊東美咲さんも一緒に居たんですけど・・・
夜も戻ってこなかったんですよ・・・」

”えっ??????。”

「社長と美咲は、つまり、その・・・仲良し・・なんで、ひょっとしたら今も一緒かも・・・」

”えっ??????。”

「とっ とりあえずの彼女の携帯電話に連絡してみましょうよ・・。」

「ピ ポ プ ぺ プ ピ パ ・ ・ ・ ・」

『電波が届かない場所にいるか、電源が入っていない為、かかりません・・』

「くそっ! 仕方がないな・・・とにかく手分けして探そう!」
あっ!、この事は俺たちだけの内緒だからなっ!
そう言って、その女の子と僕とA子さん 3人だけの
心の内に秘めておく事にした・・・。
それが、大人ってモンさ!(ねえ~?!)

しかし、なんだよ・・・社長・・。
なかなかやってくれるじゃないの!
会社の娘に手を出しちゃってさ~。
っていうか、美咲も美咲で、あんな年寄りのどこが良いのかね??
まあ~そんなことはどうでもいいが・・・
どこを探せば良いんだ??

その時、A子さんが
「遊園地・・・遊園地じゃない?ひょっとしてさ・・・
実は・・・、私も見ちゃったのよ・・・。
夕べ、あの時・・・私に電話がかかってきてさ、
赤岩君が1人でホテルに帰っちゃった時・・・。」

『ああ~君がコソコソしてた時ね!』

「もう~そういうこと言わないで・・。それでね、その時、
お化け屋敷の近くにあの二人を見たのよね・・」

『そうなの??と、とにかくそこに行ってみよう。』

僕らは急いで遊園地のお化け屋敷を目指した。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
まだ、遊園地の開園時間ではないので
従業員の方もほとんど居なかった。

『お化け屋敷の近く?・・・近くって言ったって、どこを探せばいいんだ・・?
この近くにあるもの・・か・・・?』

「WCくらいしか無いわよ・・。他には、清掃用具用の倉庫と・・・
旧い焼却場・・・だけね」

『えっ!?そうか!それだ!!焼却場だ!
踊る大走査線という映画では、この中に
縛られたワクさんが居たはずだ!赤い煙幕を煙突から・・・
待てよ・・・?
清掃用具入れのような場所にも、縛られていた警視庁官が居たし・・・
どっちだ??」

「ホントに?!あなた映画の見過ぎじゃないの??」

『でも、可能性は在りうるぞ!』

僕らはドキドキしながら、
まず、清掃用具倉庫に近づいてみた・・。

ドアには、鍵はかかっていなかった。
恐る恐る開けてみる「ゴクリ・・」
中を見渡したが、誰も居なかった。

『居ないとなると・・そうか、やはり焼却場だな・・。』(思い込む赤岩)

開けてみると、遊園地のゴミ袋が山になって、置いてあった・・・。

「キャ~!」
彼女が悲鳴を上げた・・・
なんとそこには、裸の二人が倒れていたのだ。
(あああああ~~~~どうしよう~~~)

良く見ると、マネキン人形だった。

『もおおおおおお~~~~!驚かすなよ!(怒)』

「だって、二人で、ほら、死んで・・・ご、ごめんなさい・・」

まあ~良く考えてみれば
だいたいそんなに映画のように、こんな所に二人がいるはずが無いのだ。
それに、死なれちゃ困るんだよね。

『他を探しましょう・・』

「そうしましょう。そうしましょう~」

『ねえ・・・、もし、赤岩君だったら、
男女で二人っきりコッソリ隠れるとしたらどこに行く?』

「そんなもん、ラブホに決まってるじゃんっ!」

『もお~バカ!ここよ、遊園地の中だったらって事よ・・・』

「あ~そう・・・そうだね、俺だったら、誰も来ないお化け屋敷だな・・・」

『夜中に、あんな薄気味悪い所に隠れるの・・??』

「コッソリって言ったろ!だから、誰も来なくて良いんだよ!」

『・・・・!そうか。そこよ!お化け屋敷よ、きっと!』

「そんな所行くか?普通??」

『今、あなたが言ったじゃない!お化け屋敷って・・・』

「そうか、普通じゃないところを探さなきゃな!」

僕らは「お化け屋敷」を探しに行く事にした。

入り口は、「鍵」がかかっていた。
鍵というより、鉄の棒が穴に通されているだけの簡易式のもので、
簡単に開けられた・・・。

「社長居ますかあ~~?」大きな声で叫んでみた・・・

すると、真っ暗な壁がくるりと裏返り、ガイコツが「うおおお~」と言って現れた。
『キャー!』彼女が叫び、僕に抱きついてきた。(ちょっと嬉しい・・・)

「なんだよ、なんだよ?開演前でも、仕掛けは動くのか??」

このお化け屋敷は、日本でも3本の指に入る怖さだと聞いているが
一発目から、こんなに怖いのか???俺こういうの苦手なんだよなあ~・・・

その後、ミイラ男は出現するわ、ドラキュラは出てくるわで大変だったが
「社長~社長~・・・」
と声をかけながら一歩一歩奥へ進んで行ったのでした・・。
しかしお化けが出現するたびに、「キャー、キャー」と
彼女の悲鳴が館内に響くたびに
僕自身、すごい恐怖感も感じていた・・。

「ちっきしょお~社長のヤツ~~人騒がせな・・・
見つけたら、ファミレスでスパゲティー大盛りをおごってもらうからな!
しかもコーラとパフェもつけてやる!
いやまてよ、お徳用ステーキにしようかな・・・」

なんて考えていたその時、

《うおお~~~い・・・》

『!!?ねえ・・・今、何か聞こえなかった??』

「えっ?何も聞こえなかったぞ」

《うおお~~~い・・・》

『ねえ。聞こえたよね!』
「うん、聞こえた」

「社長ですかあ~~??赤岩で~す!」

《赤岩・・・助けてくれ~~~》

『社長よ!ここに居るんだわ!』

僕らは急いで出口を目指した。

しかし、お化けや幽霊達は、容赦なく僕らを脅かす・・。

《赤岩・・・赤岩・・・》

たぶん社長の声だと思うが
これも幽霊の叫びにも聞こえてきてしまう気の小さい僕でした・・・

(赤岩・・・あかいわ・・・赤いわ・・・血は赤いわ・・・
真っ赤なお前の血をくれ~そして俺を助けてくれ~・・・!キャ~)妄想の世界

その時、
『きゃああああああああああああ~~~~~~~~』

一段と大きく高いA子さんの悲鳴が響いた・・。

「どうした!?」

『あ・アシ・・足・・』

A子さんの足を見ると、
幽霊の手が彼女の足をつかんでいた・・・。
「この忙しい時に・・このっ!」
僕はそう言って、幽霊の手を蹴飛ばした。

《痛~~~~》

えっ!!!!!!!!!???????????

《赤岩君、俺だ・・・》

『社長!』

「社長!?」

こうして、社長は発見されたのでした・・・。

聞けば・・・
コッソリ、美咲さんとお忍びデートを楽しんでいたようだが
AM0時をまわってしまった事で、
出口に鍵をかけられてしまい、出られなくなったそうなのだ・・。
仕方が無く来た通路を戻ろうとしたが、
各所にある回転式扉のため、開かず無理してこじ開けようとしたら
そこに足が挟まり、仕方が無く抜けなくなってしまったそうなのだ・・・。

気になる伊東美咲さんだが・・・
僕らがあれだけ大騒ぎして助けに行ったにもかかわらず
まったく気がつかず、社長の後ろで、ぐっすり眠っていました・・・。

《赤岩君・・・あの、この事は・・・》

『社長!大丈夫ですよ!この事は誰にも言いませんから!
その代わり、私達にイタリアンのフルコースご馳走して下さいね!
ねえ~赤岩君!』
「えっ?ああ~そうですね。そうしてください・・・」

ファミレスで腹いっぱい食ってやろうと思っていたのに、
イタリアンなんか、要求しちゃって・・・あ~あ。
(ああ~小市民の赤岩君・・・)

時計の針を見ると、9時35分。
とりあえず、柴田専務はじめ数名とホテルの方に、
社長が見つかった事を告げ、一件落着。
もちろん、どこに居たかは僕らのナイショだ!

一応、表上社長は、
・・・γ館の「超高級フィンランド式サウナ」にあるデラックス仮眠室で
別料金で一回5万円のマッサージを受け、
気持ちよくなったので、そのまま朝を迎えてしまった・・・」という事にしておいた。

僕ら社員は誰一人、そんな高価なところには行かないからね・・・。
秘密は守られるだろう・・・。

でも、柴田専務には、いずれ知れるだろうけれど
その事はA子さんが『私に任せておいて!』と言っていたので
全て任せておくことにした・・・。

なぜか?社長の手首が痛いという事で
医務室に連れて行き、手当てをしてもらった。
なんでも捻挫しているらしいのだ・・・。
きっと、開かない回転ドアを開けようとして
激しく叩いたんだろう!
若い彼女を助けようとして~
やってくれるぜっ 社長~~!

《赤岩・・・お前あの時 俺の手を蹴飛ばしたよな・・・》

「えっ?!あの時・・・!!!!そういえばA子さんの足元に・・・・・」

《ア・カ・イ・ワ~~~~~怒》

ひえ~申し訳ございません!」

《まあいい!今回は君達のおかげで助かった。礼を言うのはこっちだからな。》

こうして、ドタバタ騒ぎの慰安旅行は終わりを告げようとしていた・・・。

僕らは別れて、家族へのお土産を買ったり、もういちどお風呂に入ったりと
最後の旅行気分を楽しんだ・・。

♪・・・・♪
A子さんから電話が入った。

『今、何してる?』

「ああ~ロビーの大きなイスでぐったりしてますです・・・何か用でしゅか?」

『あと1時間でこの旅行も終了よ!ねえ~最後まで一緒に居ない!?』

「ええ~~俺を誘惑してるのでしゅか?・・・まあいいけど・・」

『それじゃ、昨夜の渡り廊下に居るから、すぐ来てよ!』

重たい体を起こし、僕はまた彼女の所に向った。

廊下に行くと、太陽光に眩しく反射した白い天使が居た・・・

「んっ?だれだ?・・・A子さんか??」

『ねえねえ!この白いワンピース似合う?ちょっと、若すぎたかな??』

わお!!
オイラは白いワンピースが大好きだったのだ・・・。
でもなんでA子さんが着てるんだろう?
素直に聞いてみると
モジモジしながら
『だって、赤岩君、これ好きって言ってたじゃん・・・』

以前、彼女にそういう事を言ったようなのだが、
なぜそんなことを覚えていて、なぜ今それを着てるんだ???
いやいや・・・
理由なんか、どうだって良いのだ。うん。
僕の好みの女性が、好みの服を着て、今こうして横に居るのだから・・・。

近づく僕に、彼女は素早く腕を組み、耳元で小声でささやいた

『ねえ・・・』

(ナ イ シ ョ ・ ・ ・)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

寝不足で、また朝から大騒ぎしていたので
疲労もピーク・・・。
当然みんな誰もが寝不足&飲み過ぎ&遊び過ぎ・・・
帰りのバスの中はみんな爆睡したままでした。

ただ僕には1つだけ気がかりな事があった・・・。
昨夜深夜の逢引(デート)していたのは誰なのか・・・?
まずい事にならなければ良いと、不安がよぎった・・。

そこで、そういうことには詳しい情報屋の同僚Bを叩き起こし
さりげなく聞いてみると・・・

「お前、知らなかったのかよお!
田中部長と掃除のおばちゃん和子さんが
和風居酒屋「乙姫」で仲良くしてたんだよ・・・。」

『そっ、それだけか??』

「それだけって・・・それだけだよ!?お前 他に何か知ってるのか???」

『いやあ~そうか、部長がねえ~・・・あはは・・・・・・・』

良かった良かった・・・。僕も眠る事にしよう・・・

あっそうだ!
僕にはもう1つの仕事が残っていたのだ・・・

そして我社のゴッドファーザー(会長)宛てに電話を入れた・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
会長!任務終了しました。
無事に柴田さんとA子さんは別れたようです・・・

また、以前から陰のうわさになっていた、社長の一件も
無事解決しそうですぜ・・・

おかげで寝不足ですよ。ボーナス弾んで下さいよ!

会長:「何を言ってる!?そういう仕事も特命科の仕事だ!
まあ~いい。今日はゆっくり休め。あっそうそう。
みやげに鯵の干物買って来いよ」

了解っ!そんじゃまた。プチ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

俺の本当の名前は「只野仁」タダノヒトシ
会長室直結の役務で
会社のスキャンダルを事前に防ぐ特命科係長なのだ・・。

♪ちゃんちゃん!

(おわり)

空想&妄想小説~宇宙戦争編~

ご注意

※ これから出てくる人物名や名称、出来事や空間的なことなど、
  100%架空のものですので予めご了承下さいませ。

 

西暦2299年…
地球は、
宇宙からの侵略者E・Tと、
地球二大都市による科学戦争を引き起こした・・。
化石燃料を地中から汲み上げていたポンプは止まり
一滴のガソリンを求めて、
命を奪い合った…
指導者達は何度も話し合いをしたが
解決策は見つからず
いつしか、
強いものだけが生き残る暴力の世界になっていた…。
強盗、レイプ、殺人…犯罪という犯罪が
人々の目の前で起こるのだが、
それを止められるものは居なかった…。
警官は目をふさぎ、
宣教師でさえ、何もできない…
怯え震える日々を暮らす事に
絶えられない者は自らの命を落とし、
またそれを追う者も後が絶えなかった…
まさに生き地獄…
誰もが絶望感しかもてない時代であった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~

この星を支配してきたGOD財団…
その権力すべてを一人ほしいままに操り、また
すべての欲求をかなえようとたくらんだ悪魔…
その名も「エンペラー・エクザエル」…。
彼の元には常に10000人の殺し屋集団「エクザエル軍団」がついている。
エンペラーを倒す為に
今まで何人もの勇気ある男達が挑んだが、
10000人のエクザエルを前に、
勝てるものなど居なかった…

しかし、
10000人のエクザエルを持つ
エンペラーでさえ、恐れる男がいたのだった・・・。

それは
10年前、この地球を追放になった男…

地球に侵略するE・Tを攻撃する為
戦闘船機「アルカディア号」に乗り、勇敢に戦った男…。

エンペラーの連邦軍と
アーサー王のアルト軍…
この地球の二大勢力「アース・ソルジャー」は
共に協力し
宇宙よりやって来た、
「地球侵略軍E・T」を撃退するはずであった…
しかし
連邦軍は戦いには参加しなかったのだ…

そのため単独で戦ったアルト軍は多くの犠牲者を出し、
もはや、これまで…と思われたが、
アルト群最後の一機「アルカディア号」の活躍により
E・Tと勇敢に戦い、勝利した…

しかし連邦軍は
「これはアルト軍の残虐だ!」と言い、
また人々もアルト軍を非難した…。
地球政府はE・T撃退後、
宇宙戦争責任者として
アーサー王のアルト軍を強制解散。

さらに、アーサー王国をエンペラーの国土とし、
二大勢力で成り立っていた地球は
この時一つになった…

アルカディア号の船長はじめ乗組員全員を地球より追放…
今もこの宇宙のどこかを
あのアルカディア号と共にさまよっている…

時折、天空から放たれる雷(いかずち)は、
アルカディア号の砲撃に間違いない…

エンペラーの最も恐れる男
それは
アルカディア号艦長…

その名は『キャプテンMAKO』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(ここは宇宙空間・・・)

副官:「艦長、右30度より敵艦発見。」

艦長:『主砲発射用意…発射!』

副官:「発射!」

(バビュ~~ン・・・ボカ~ンボカ~ン)

副官の名は「アーサークイーン。」本名<アスカ・ラングレイ>
アーサー王の一人娘だ。
キャプテンMAKO と共にアルカディア号に乗り、
地球より追放された一人なのだ…。

艦長:『損傷部確認!いそげ…』

仕官:「右舷排気口付近砲弾穴あり…」

副官:「航路変更しますか?」

艦長:『いや、そのままでいい…メガエンジン出力最大!
フォーメーションB! 波同胞準備…』

副官:「えっ?敵は右ですよ…波同胞は正面だけの…」

艦長:『かまわん!波同胞撃て!』

副官:「は・はい。波同胞発射用意…発射!」

ドッヒュゥ~~~ン・・・・・・・・・・・・・・・・

ひゅう~~~~~んんんんんっ!

ボッカ~~~ン!

「やった~~~~!わあ~わあ~パチパチ…」

副官:「なぜ?どうして正面に撃ったのに、右舷の敵に当たるの??なぜ…」

艦長:『再度損傷部確認…戦闘態勢解除…怪我人の処置を優先しろ!』

仕官:「波同胞口一部融解!右舷前方および中央部に亀裂発生・・・」

艦長:『何?亀裂?!だと・・・仕方がない…フォーメーションAに戻せ!』

副官:「・・・・・・・・(まだ、放心状態)」

艦長:『アーサークイーン!…クイーン!
おい!アスカ!フォーメーションAだと言ってるだろっ!』

副官:「えっ!?は・はい。フォーメーションA 変形します!」

(ぐい~ん がちゃん!ぐい~ん がっちゃん!!)

仕官:「フォーメーションBからAへ 変形完了!」

副官:「”無敵の旗”アルカディアを揚げて…!」

艦長:『フォーメーションA にて、巡航開始。各部修復急げ!・・・』

仕官:「艦長・・どうして先程正面に撃ったはずの波同胞が横の敵艦に…」

副官:「そ、そうです…どうして当たるのですか?」

艦長:『フッフッフッフ…まだ解らないのか???』

副官:「私はあなたの副官です…何でもお話になってくださいませ…」

艦長:『クイーン…俺と一緒に、何年この船に乗っているのだ…』

副官:「艦長…いえ、MAKO…私はあなたのを~」

艦長:『・・・・後で俺の部屋へ来い!』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

クイーン:「MAKOだけを見てきました…どんなに厳しい状況でも
あなたに付いてまいりました…。
地球から追放された形になってますが、
実は宇宙にいて、E・Tが地球に近づくのを事前に
守る仕事に就いたのも、
あなたに付いて行きたかったからです・・・」

MAKO:『君には感謝している…アスカがいなかったら
このアルカディア号は…いや、俺自身、
E・Tとの戦いに敗れていたかもしれない…
それだけじゃない!俺は君の事を…』

~~ LOVE
LOVE
LOVE
LOVE~~

~~~~~~~別の日の戦い~~~~~~~~~~~

副官:「左舷より敵艦接近」

艦長:『波同胞発射準備、発射!』

副官:「発射!」

ドッヒュゥ~~~ン・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ひゅう~~~~~んんんんんっ!

ボッカ~~~ン!

副官:「また、やりましたね!」

艦長:『ああ・・・。』

副官:「教えて頂いていいですか?なぜ命中するのかしら??」

艦長:『君たちにも伝える時が来たようだ…
それは・・・・

手品だ!

一同:「!!#####&%・・だあああああああああああ~~~~~・・・」

エンペラーの恐れる男…
    それは 地球一の手品師だった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ちなみに
なぜ命中したのか?
それは前方にある、惑星に
波同胞を撃った事で
ぶつかって、戻ってきたという訳さ!
「ビリヤード戦法」と言えば解るかな??

フォーメーションBとは
ミッキーマウスの形をした戦闘機で、
アルカディア号に備えてある秘密兵器である…
この可笑しな、やる気のない宇宙船に
E・Tは笑ってしまい、
油断したところで、一気にやっつけちゃうという、
恐ろしい最終兵器&作戦なのだ!

無敵の旗”アルカディア”はクレヨンしんちゃんが
「あっかんべ~」をしている絵である…
これもまた、E・Tにやる気のないことを示し、
民間船だということを伝える
考えられた作戦なのだ…

キャプテンMAKO・・・
寝込みを襲う、恐ろしい男。

空想&妄想小説~妄想デート・スキー編(後編)~

ご注意

※ これから出てくる人物名や名称、出来事や空間的なことなど、
  100%架空のものですので予めご了承下さいませ。

 

時計の針は5:40を示していた。
さすがに冬山は冷える…。
動かないでいるから、
なおさらだな。
よし!
雪だるまを作ろう~!

あんなに青かった空も、
こんな時間になると、もう真っ黒だ…
所々、星もキラキラと見えている。
星座の名前は全く知らないが、
きっと有名な星なんだろうな…
などと考えながら雪だるまを作っていると、

どこかで鐘を鳴らすの音と同時に
軽快な音楽♪が流れてきた…。
なんだろう??とゲレンデを見ると
松明を持ったスキーヤーが大きな円を描きながら
滑ってくるではないか…
7色にライトアップされたゲレンデは
なかなかロマンチックな光景だ!
こういう瞬間に彼女が居ないのが
なんとも残念だ…

というか、
僕がスキーが上手ならば
一緒に上まで行って、シュプールを描き
笑顔で「たのしいね!」って言えるんだろうけれど…
それでそれで、
「ほら見てごらん、あの燃える火は、僕達だけのものだね!今日の君はステキだよ…」
な~んちゃって、ムード満点なんだろうけれど、
あ~あ、僕には雪だるまがお似合いさ!
いいんだいいんだ…、ぐすん。

『ステキな雪だるまができたのね…』

おお!彼女の声だ!

『遅くなっちゃってゴメンネ…一番上まで行ったものだから…』

ああ~いいさいいさ、初心者の僕を指導していたから、そのストレスを発散してきたんだろうし、
まあ~そのくらいは許してやるつもりだけれど、寂しかったのは事実だ!このやろ~。
しかし、僕は大人さ!

「ううん、全然平気!雪だるま作ってたからさ…」

そこへようやくみんなが帰ってきた。

「もう6:43だよ。早くコテージに帰ろうぜ!」

そういって、ゲレンデを後にする僕達でした…。

コテージについた僕達はさっそく着替えて、
お風呂へ…

スキーの汗と疲れを流し、
いよいよ食事タイム!

ホテルから届けられたディナーをテーブルに並べ
シャンパンを開けて…
「メリークリスマス!」

テイクアウトのメニューとは思えないほどの内容の食事と、
疲れた体に沁みるバドワイザー…
クリスマスツリーの電飾もいい感じ。
大森君のギターもいい音を出していた。

大森君は今年の夏に一緒に海に行った友人だ!
ななこちゃんという彼女ができて、
この半年は楽しかったに違いない。
目じりが下がりっぱなしだ!!
ギターが奏でる曲は
すべてLOVEソング…
きっと、ななこちゃんに贈っているのだろう~

横に座っている僕の彼女は
なぜか、さっきから黙ったままだ…。
ふと理由を考えてみると、
リフトの事件もあったし、
なかなか上達しない生徒であったぼくだからであろうか??

「どうした?飲まないのかい??」

『怒ってるかな…と思って・・』

「だれが?僕が??なんで???」

『だって…今日私あなたを怒っちゃったし、
キツイ言葉をビシビシ言っちゃったし、
あなたを置いて、上級者コース行ったし、
遅くまで、一人にさせたし…』

「何にも思ってないよ…そりゃ一人で居た時はちょっと寂しかったけれど、
君が楽しくなきゃ、僕も楽しくないからね!全然気にしてないさ…

『ありがとう・・』

「それより僕のほうこそ、恥ずかしい思いをさせて悪かったね。リフト初めてだったからさ…」

確かにあれは、恥ずかしかったわよ!クスッ!でも、誰にも言ってないからね…』

(見つめ合う、2人・・)

「おい!そこ!!イチャイチャしない!」
お酒に酔った静香さんが僕らを指差した。

拓哉君と静香さんは酒豪だ!
もうすでに2人とも缶ビールは7本は飲んでいるし、
その前にワインを4本空けている…
昼間もハンバーガーとビール3本ずつを飲んでいたし…
きっとスキーの途中も…
でもそれが悪いかといえばそうじゃない。
まあ~僕らも似たようなものかな??

福山君とアスカさんは相変わらず仲がいい…。
缶ビールも、半分ずつグラスに空けて飲んでいるし、
料理も、「あ~ん」とか言って、食べさせあっているし、
見ている僕らのほうが恥ずかしいくらいだ。

大森君達は半年前に知り合ったとはいえ、
もう、誰が見ても完璧なカップルだ!
新鮮さを失わない、微笑ましい雰囲気で、
見ているものに、嫌な気をさせないのがいいね!
個性的な彼に、ぴったりな、かわいい彼女は
このコテージに色を添えていた…。

拓哉と静香は何がおかしいのか
ゲラゲラ笑いながら、また「ぷしゅっ」と缶ビールを開けていた。
もう、10本目か・・・?!

2時間くらいパーティーをして、
とりあえず片付け…

福山君達は相変わらず早めに個室へ…。
卓也君達はイスにもたれたまま、グーグーグー。

僕達と、大森君達は一緒に近くのホテルにある
有名なショットバーに行く事にした。
大森君持参のお酒もいっぱいあるのだが、
ここのショットバーもぜひ行って見たい…という事になったのだ。
福山君や拓哉君達も誘ったのだが、
彼らは眠いという事だったので、
僕らだけで行く事になった・・・

星空の下をテクテクと歩く事5分。
ホテルのラウンジに着いた。

さすがにハイシーズンだけあって
ラウンジも賑わっていた。
僕達と大森君達は別々に座り、
思い思いの時間を過ごす事にした…。

大森君達はカウンターに座り、
難しいカクテルをオーダーしているようだった。
ドライマティーニを辛口に仕上げたものが好みのようだ…。
ななこちゃんは
カット・オレンジがついた、ジュースかな??

僕らはというと
思い出のダイキリとカルーアミルクをオーダーし、
スキー場を眺める事が出来る、
窓際のカウンターに席を取り、
2人の時間を楽しむことにした…

今日は彼女に特別な話をしたかったのだ。
そう特別な話を・・・。

実は彼女のお父様から、

「そろそろ、終わりにしてもらえないか…」
と、言われているのだ…。

終わりにしろって言われても、
そんなのはイヤだ!!
なんで、また、どうしてさ???
と聞きたかったが、
その場は何も言わず帰ってきたのだ…

その辺の話を彼女としたいのだが、
どこから言い出していいものか、
迷っていた時、

『何か言いたそうな感じだね!』と彼女が口を開いた…。

「いや、別に…うん、いや、実は…」

『なに?何でも言って…』

「うん…」

そこで彼女に、先日のお父様の話をした…

彼女は顔色を変えず、黙ったままだった。
僕も、また黙り込むしか術がなかった…。

『あなたはどう思ってるの?』

「えっ?あ、いや…」

『あなたは、どう思ってるのかって聞いてるのっ!』

「・・・一緒に、居たい。」

『本当に?』

「うん、本当に一緒がいいと思ってる。君じゃなきゃダメなんだもん…」

『それなら決まり!そんな私の父の話は無かった事にして!』

「・・・・ そう言うのなら、そうするよ。聞かなかったことにするよ。」

『後は私に任せて!』

もっと、ドロドロした話になると思っていたのだが
案外、さっぱりした感じの話だったなあ~。
まあ~良いかっ。
僕と彼女の間には、
壁もないし
何も迷わず思いのまま
まっすぐ行けるって言う事だし、
それが今、お互いに確認できたわけだから
他には何もいらないし…

なんだか、嬉しかった。

しかし、
今日の彼女はいつもと違って
しっかりしているなあ~。
スキーもあんなに上手いし、
お話もバシッとしてるし
ああああ~
今回の僕は
彼女にいい所を一つも見せられない~~~
でも、そんな事はどうでもいいのだ・・。
僕はこの、「僕の彼女だけ」には
そういった背伸びみたいな事は
したくないし、
自然体で居たいからね…。

カクテルを2杯飲み干したところに、
大森君が
「僕たちこれで引き上げますが…」
と言って来た。

僕らもすぐに後を追うことにしたが
もう少し、彼女と一緒に居たかったので、
ちょっと遠回りしてコテージに向かう事にした。

外にある、
ホテルの教会がクリスマスイルミネーションで輝いていた…
<愛の鐘>に紐がついていたので
2人で引っ張った。
静かな夜に、綺麗な音が響いた…
「カラ~ン・カラ~ン…♪」
想像より大きな音にちょっとビックリし、戸惑ったけれど
2人の擬似結婚式は、終了。
僕は優しくキスをした…。

外はすごく寒くて
体がガタガタするくらいの気温であったけれど
彼女と共に過す時間が
こんなに楽しくてあったかいと感じたことは
僕達2人の共通点だろうと思う…。
星空も輝いていた。
僕らを祝福するように…。

コテージに戻ると、
福山君や拓哉君達が外で花火をしていた。
冬の花火はまた綺麗なのだ・・。

「お~い!早く来い!お前達いつも遅いぞ~!」

僕と彼女は手を繋いだまま
みんなの元に走った…。

ドラゴンの花火が
僕らを呼んでいるようだった。

その時、彼女の手を絶対離したくなかった僕だった…

今、離したら2度とそのぬくもりを感じられないのではないかという不安が
僕の中で起きていたのだ…

PM11:00
またまた大森君のバーがOPENした。
今回は大森君手作りのバーカウンター付だ!

みんなでカクテルを数杯楽しみ、
お酒と雰囲気に酔って
いろいろおしゃべりを楽しんだ…
もう明日のことなんか、どうでもいいくらい
飲んで、盛り上がり、
笑い続けた…

「そういえばみんな知ってるか?」 と福山君…

「今日、初心者のゲレンデでリフトから降りれなかった奴がいたらしいぜ!」

『うっそ~だって、あそこって、子供でも降りれるくらい低いよ~』

「それが、そういう人がいたって、さっきリフト係りのおじさんが言ってたぜ!」

「それでさ、そいつがもう一度そこに戻ってきてさ
   降りた瞬間、周りで見ていた人たちが拍手したらしいぜ!」

『ある意味、凄い、エンターテイナーですなあ~(笑)』

「おいおい、まじかよ~あははははははは~~~」

この場でどうして良いのか解らない、僕でした…。(赤面)

突然

『そういう人だって居るのよ!決して恥ずかしい事じゃないわ!』

と僕の彼女が…

さらに

『みんな、笑う事ないじゃない…MAKOTO君だって頑張ってやったのに…!

(一同、目が ・ ・ ・ ・ 。)

<おいおい、言うなよ…誰も、この僕だってことは知らなかったのに…>

「飲っ飲め飲めっ!そういう奴が居てこそ、楽しい世の中だ!」と、拓哉君。

僕は下を向いたまま、チビチビぺろぺろカクテルを飲むのであった…

しかし、

彼女は自分が僕の名前を言った事に、気付いていない…。

夜は楽しく更けて行った…。

終わり

空想&妄想小説~妄想デート・スキー編(前編)~

ご注意

※ これから出てくる人物名や名称、出来事や空間的なことなど、
  100%架空のものですので予めご了承下さいませ。

 

♪ゲレンデのカフェテラスで~滑るあなたにクギ付け~♪
♪恋人がサンタクロース、ほんとうはサンタクロース~♪

今日は12月23日 クリスマスイブイブだ!
夏にキャンプした仲間と一緒に、
今回はスキー場のコテージを借り、
スキー&クリスマスパーティーと洒落込むのだ~!(イェイ)

AM9:00
先週納車されたばかりの「スズキ・ジムニー1300」に
荷物を積み込み、いざ出発!!
「クックック…この車見たら、彼女ビックリするだろうな…」

僕のジムニーは、「ジュラシックパーク」仕様なのだ!
えっ?どんなやつかって??
あの恐竜映画に出てきたジープのカラーリングをそのままに
ホワイトとオレンジに塗り分けられて、
ドアには恐竜の絵が描いてあるのだ!
えっ!?
恥ずかしいって???
う~~~ん・・・
まあ~そうとも言えるけれど、
解る人には分かるはずなのだ!

街を走ると、
みんなの顔が微笑んでいた…
うん、さすがにクリスマスシーズンだね。良い事だ!うん。
しかし、
みんなはどうもこの車を見て笑っているようだ…
おお~!みんなジュラシックパークを知ってるのか???
笑われようが、
みんなの目に留まるのは
うれしい事だ!
僕は自慢げに、ジムニーのハンドルを握っていた。
交差点で止まると、
後ろの車の人が声をかけてきた…

「屋根に猫がのってますよ・・」

なんと、愛猫の「ガンダム」がスキーにつかまったまま
震えてるじゃないか~~~。
慌てて家に引き返した僕でした…。

指先確認で異物?が乗ってない事を確認し、
急いで彼女の家に車を走らせました。

「ご、ごめん…遅くなっちゃった。」

『ジープ借りてきたの??おもちゃ屋さんのお知り合いいるの?』

「おもちゃ・・・?(まあ~いい。彼女に話しても解らないだろう・・・)」

荷物を車に押し込んで、
それでは出発!!!。

「ねえ~ジュラシックパークって言う映画知らないの?」

『聞いたことはあるけれど、それが何?』

「この車さあ~その映画に出てきたジープにそっくりに塗ったんだよ・・」

『ごめん、全然わかんないや…あなたの車のドアに
ゴジラちゃんの絵があったのは不思議だけれど…それと関係あるの?』

「ゴジ・・ちゃん・・って、こ・これは恐竜なの!その映画にもここに恐竜が描いてあったのっ!」

『ふ~ん…てっきりウルトラマンに出てきた車かと思ったんだもん。
きっと、マニアックなおもちゃ屋さんか、動物病院さんが、
営業車をそういう風にしたと思ったんだもん。
あなたの友達だったら、そういう人居そうじゃん!!』

「・・・・・。」
(的中しているだけに、何もいえない僕でした・・・。)

もう車の話はやめよう…そうなんだよ、彼女はそんなに車に興味はないのだった…。

クリスマスミュージック♪をBGMに
山道を進んだ僕達は3時間ほどで、
無事到着!

拓哉君や福山君や大森君達、
みんなは、もうすでに集まっていた。

「こんにちは~~」

挨拶もそこそこ、
早速お部屋の飾りつけ…
拓哉君と福山君はクリスマスツリーの準備。
大森君は組み立て式のバーカウンターを車から降ろしセッティング・・・

彼女達は壁に飾りをつけたり、
テーブルのセッティングしたり…
僕はホテルにハンバーガーの買出しと夕食の予約手配を…
テラスの隅の雪の中に、バドワイザーをばらまき
これで準備終了!!
遅いハンバーガーのランチをとり
ゲレンデにレッツゴー!!

拓哉君や静香さん、
福山君やその彼女、名前はアスカさん、
大森君もななこさんも、
みんな、スキーは上手なのだ!!
いや、上手なんてモンじゃない…
このゲレンデで
あの6名以上の達人はいるのだろうか??
と思うくらい、うまいのだ!!
みんな活き活きとスキーを滑らせる…。

うう~このシーンはどこかで見たことが…
デジャブーってやつか???
いや、違う…
あの有名な映画「私をスキーにつれてって」みたいだ~~~!

彼らがリフトから僕に手を振る…

初心者用ゲレンデにて
まずは止まる事を練習している僕は
スキー初体験。
イメージはあるのだが、
勝手は違うようだ…
ちなみに、講師は僕の彼女。
情けないったらありゃしない…

彼女のお兄さんはスキーのオリンピック養成選手だったのだ!
その兄きと一緒にず~っと練習していたぼくの彼女は
あの6名よりスキーが上手いはずなのだ!
こんな青空で深雪が多いスキー場に来て
僕のような超初心者を相手に
インストラクターしているってことが、
申し訳なく思うのだ…。

カニさん歩きで20メートルのぼり
へっぴり腰で滑る・・・
そんなことを1時間ほどやっただけで、
汗びっしょり…。(情けない)
でも、まだ講習は続いた…

「休憩しましょう!」

『ほっ…やっと……ふう~。』

売店で生絞りジュースを一つ買い、
突き刺したスキーにストックを横に渡したものをイスにして、
広いゲレンデを見ながらの休息タイム…

『気持ちいいね~!』
と彼女が背伸びをしながら言った…。
しかし、
きっと彼女は不満だろうな、
ほんとうだったら、あの一番高い所から
バビュ~ンって滑ってくるはずなんだろうに、
僕と一緒だから、出来ないで居るんだよな…

『私、スキー場でこうしてゆっくり座って、お飲み物をいただくなんてしたこと無いんだ…
なんだか、嬉しいな~~~!
今まで、いつも兄と一緒だったから、滑ること以外は考えられなかったなあ~
今日は誘ってくれてありがとう!』

さすがは僕の彼女だ!良い言葉を知っている。うん。
嬉しさのあまり、ちょっと感動!

『さあ~休憩終わり!次はリフトに乗るわよ!』

リフトに乗るっていったって、
乗り方を知らない僕にとって、かなりの難題である…

『大丈夫!勇気を持ってエイヤって…OK!?』

「おっ・・OK!」
そう、彼女に問われ、そう言ってしまった僕だが、
勢いだけで何とかなるのだろうか????

僕の前に保育園くらいの子供がリフトに乗った…
良く見て、真似をしようと思ったのだが、
一瞬の出来事に、どう乗ったのか…
見えなかった。

『私達の番よ!行くわよ!!っせ~のっ!』
ひざにイスが当たり、
「おお~~」と思っているうちに、
何とか乗れたみたいだ…

足にスキー板の重さを感じ、
ドンドン高くなるリフト…
何処につかまって良いのか解らず
彼女の腕をつかむ僕…(う~情け無い×2)

この斜面を降りれるのか??
まあ~何とかなるだろう…
僕には大先生がついているのだ!
落ち着け!良し。うん。
そう思った矢先、
もう降りる場所に着いた…

「スキーの先を上げてください」
と書かれた看板があるが
一体どういうことだ??

彼女の指示により
その意味を理解し
降りる瞬間が来た…
彼女がす~っと降りたのを見た僕は…

!#####~~~??!!###%$&#”!!

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

僕はず~っと下を向いたまま赤面していた…。

「あはっはっははは・・・」
という笑い声が聞こえていた。
もう火が出るくらい恥ずかしかった…

実はリフトから降りれなかったのだ…。

気がついたら、彼女だけが降りて…
そのまま、す~っ と彼女は滑って行って…
こっちを見たのを確認した瞬間
僕はクルンと下に向かって・・・

下のリフト乗り場では

「ハイ、足元に気をつけて、そのまま座っていてくださ~い」
と、メガホンを持った係りの人が僕一人に声をかけていた…。
大勢の人が見ている中、
僕は必死に支柱につかまり、
また180度反転し、
そのままリフトで登り始めた僕でした…。

笑い声がいつまでも聞こえるようでした…。

僕が上の降りる所につくと…
(というか、一般的にスキーヤーが降りる場所なんだけれど…)
彼女と、係りの方々3名が居た・・。
そのほかにもギャラリーが?集まっていた。

『タイミングを言いますから、
  上手く降りてくださ~い』
と、メガホンで大きな声で言っていた…
『1-2-3、今だっ!』
僕は、全神経を集中し、その瞬間にすべてをかけた…

何とかお尻がイスからはなれ、
雪面にスキー板がついたとき…

『おおお~~
 パチパチパチ・・・』

たかがリフトに乗り、降りるという行為なのに、

初心者用ゲレンデが、熱く燃えた一瞬だった…。

(超はずかしい~~~~)

彼女からこっぴどく、しかられ、
険悪な雰囲気の中
厳しいスキースクールがはじまった…。

「ああ~…」
『ああ~じゃない!』

「うわあ~…」
『うわあ~じゃない!こうでしょ!しっかり良く見て!』

そんな事を繰り返すこと数十回…
リフトに乗ること7回…
怒られること数百回…。

もう~ヘトヘト。

時計の針は
4:50
ナイター照明がついていた…。

ちょうどそこに福山君達がやってきて、
「サンセット、一本行くか?」
と彼女を誘いにやって来た。

『う~んどうしようかな??』

「どうぞどうぞ、行って来て下さい。」

しかし、サンセットとはお洒落な言い方だね、福山君は…。
「この夕暮れを滑ろう」と言えば良いのにさ、
まあ~どっちにしろ、
カッコイイ奴は、やっぱりカッコが付くもんだ!

彼女達が戻ってくる間、
僕は一人、疲れた足を休めるのであった…

(後編へと続く)

空想&妄想小説~妄想デート・海水浴編~

ご注意

※ これから出てくる人物名や名称、出来事や空間的なことなど、
  100%架空のものですので予めご了承下さいませ。

 

AM4:30
かなり早い時間だが、
彼女を迎えに車を走らせた…

今日は先週キャンプで知り合った
大森君となな子さんと
海に行く日なのだ!
さすがに夏の夜は空けるのが早い!
東の空がオレンジ色に輝き始めていた…。

いつものように彼女は家の前で待っていた…
時間に厳しい僕の性格を知ってか、
最近は早起きをしてくれるようになった。
今日の彼女はまたいつもより眩しい…
髪はポニーテールにまとめ
黄色いノースリーブに
ジーンズを足の付け根でカットしたショートパンツ…
超かわいいルックスだ!
荷物をトランクに押し込み、
僕らはおそろいのレイバンで目元を決め、
待ち合わせ場所
高速道路にあるサービスエリアを目指した。

5時に待ち合わせたはずなのだが、
大森君たちはまだ来ない…
15分ほど待つと
まっ黒いホンダ・アコードが僕達の車の横に
勢い良く、やって来た。
「おまたせ!」
Tシャツを肩まで持ち上げた大森君は
白い歯をピカっとさせて、
「それじゃ行きましょうか!!」と声高らかに…。
助手席のななこちゃんは
ニコっと微笑んで、これからはじまる海に
期待をしているようだった…。
大森君はきっと寝不足だろうな…
アバンティーは深夜2時までの営業だろうからなあ~。

僕らは上がってくる太陽に向かって車を走らせ、
夏の小さな旅がいま スタートした!

今日の僕の車は
ちょっと古い、水色のワゴンだ!
今にも壊れそうな…ちょっと頼りない所もあるけれど、
こういう夏の遊びには、どんな車よりもカッコイイ!
と、僕は思っているけれど、
彼女はどうなんだろう?

サンルーフから見える夏空に
チューブの曲♪が良く似合う。
彼女の顔色を伺うと・・・
うん!
いつもより笑顔の量が多いみたいだ!
振り向いた、トランクスペースには
大きなワニとクジラの浮き袋がこっちを見ている…
まるで、絵に描いたような光景に
僕は心が弾んだ!

大森君のスポーツアコードは
とっくに見えなくなっていた・・・
最高速度280キロという
「R」の赤い文字が付く国内最強のセダンに比べて、
♪ガランガラン と音をたてたぼくの古いワゴンでは
彼らの車に追いつくはずも無い…
次の休憩場所は解っているから
時間どおり行けば良いのだが、
ちょっとあせってしまうのだ・・・。

伊豆の熱海から目的地の海岸へ向かう…
さすがに伊豆だ!大きなパイナップルのような木が道沿いにいっぱい生えている…
隣の彼女はキラキラ光る海を見て、
「ステキ~」と何度も口にしていた。
しかし、
さすがに暑い…
エアコンが効かないこの車では
運転もキツイ…
助手席の彼女のシャツは汗ではり付き、
かなり暑いだろうに…
そんなことを彼女に尋ねると
ニコッと微笑み、
「冷たい海に飛び込もうね!」って言ってくれている…
凄く、嬉しかった…。
こうなったら、この暑さを楽しむしかない!
カセットのボリュームを大きくして、
僕はアクセルを踏んだ!

9:00ジャスト!
目的地の海水浴場に着いた!

僕らは「アルカディア」という、
ちょっとお洒落な海の家で
1テーブルスペースをチャーターし
ウッドベンチで冷たいビールを飲んだ…
ああああ~~~~うまい!!!
彼女も凄く嬉しそうにビールを飲み、
4人で談笑した…

「ああ~海が呼んでいる…」
僕達は水着に着替え、夏の海に飛び込んだ。

「ねえ~かわいい?この水着…」
と彼女が僕に尋ねる…
彼女はマリンブルーの大胆なビキニ姿で僕の目の前に登場し
目のやり場に困るほどすらりと伸びた長い足に
上半身もナイスバディーでステキだ!
僕は言葉が出てこなかった…
血液がドクンドクンと流れるのが解った…
「なに、顔を染めてるの??真っ赤だよ~!」
『バカ!これはさっきのビールだ! いっ、行くぞっ!』

僕はそう言って、彼女の手を繋ぎ
海に向かって飛び込んだ…

さっきの暑さを忘れるかのように
大きな夏の海水に、体を任せた僕達だった…

やはり海は大きい…
心を開放させる!
今日は来て良かった…
遠くで船が通過すると
遅れて波がやってくる。
彼女は、キャーキャーとはしゃぎ
僕はそれを見て、目を細くした。

大森君たちが浮き輪に乗って近づいて来た。
2人でお尻だけ突っ込んだスタイルで
別々の浮き輪に乗ってポッチャンポッチャン・・
「いやあ~海はいいっすねえ~!」

砂浜でオイルを塗って体を焼いた…
でも彼女は日焼け防止オイルを塗っていた。
まあ、当然といえば当然だ!
僕は彼女の背中に
やさしくオイルを塗ってあげた…
彼女のビキニの紐を少しずらし、
隅々まで丁寧に、
時々手が滑って・・・
彼女に「こらっ!」。
えへへへ・・

そこへ大森君がバドワイザーを買ってきた。
暑い太陽の下で飲むビールはやはりうまい!
ゴクゴクっと体にこぼすように一気に流し込んだ。
「カアア~~。」

ななこさんも、前回のキャンプの時と違い
随分開放的で楽しそうだ!
4人で砂を足にかけあい
半分砂浜に埋まった…

その時、
「あっ…!」
僕は砂浜に落ちた数滴の赤い水を見た…

鼻血が出てきたのだ。
僕は太陽にやられてしまったのだ。
いわゆる、「のぼせ」ってやつだ…。
しかし原因の半分以上は
違うことなんだ…
彼女のかわいいビキニがその原因なんだけれど、
言えなかった…。

時計の針は12時をまわっていたので、
アルカディアに戻り、
ランチにすることにした。
朝、予約しておいたシーフードバーベキューコースだ!
炭火で焼く貝や魚はとても美味しい!!
汗をだらだらかきながら
僕と大森君は必死に焼いた。
コーラやビールを片手に
軍手をはめて、
「アチっ!アチっ!」
焼きそばのソースや
油がはねて、体にとび
「アチっ!アチッ!」…
そんな光景をゲラゲラ笑いながら僕ら4人は
楽しいランチタイムを過ごした。
ふと周りを見渡すと
みんながこっちを見ているではないか…
まあ、これだけ大騒ぎすれば
当然であろうけれど、
周りのカップルやグループの人たちの目は
僕らを羨ましそうに見ていた…。

そうさ!今日のこのビーチでの主人公は、僕ら4人なのだ!

僕と大森さんは顔が真っ赤だった…
バーベキューにこれほど体力を使うとは思わなかったし、
焼けた炭や鉄板、さらに何杯も飲んだビールも原因か???

海に入るのは、ちょっと休憩し、
反対側のビーチにある、
洞窟探検に出かけた…。
干潮になると現れるという洞窟だ…!
実は
僕らはこの情報を
この、アルカディアのオーナーから聞いたのだ!
『その一番奥にある銀色のドクロに
2人で触れることが出来れば、永遠に幸せになれる…』 と。

僕と大森君は時間をずらし、別々に行く事にした。

割り箸で作ったくじ引きで、
まずは、僕達から行く事になった…

波が来ると
バシャっと水がかかる薄暗い洞窟に
僕は彼女と手を繋ぎ穴だらけの岩肌をゆっくり歩いて行った…
波が来る度、足元をすくわれそうになり、
転ばないように慎重に歩いた…
洞窟の中にはコウモリが居たり
ガサガサ虫がいたり、
大きなカニが歩いていたり…
溜まった海水の中には
干潮で取り残された魚が横たわっていたり、
昼間とはいえ、なんとも不思議な世界だったのだ…

彼女は僕の体にぴたっと寄り添い
少し震えていた…
「おお!ビキニ姿の彼女が僕に…でへへへ」 と思うはずなのだが
この洞窟は、
確かに、気味が悪いのだ…。

かなり時間が経過したはずだが
実際には10分くらいだろうか…。
石の階段が見えてきた。
見上げてみると、
銀色に輝くドクロが在った…
「これだ!」

僕らは滑らないようにゆっくり階段を登り
銀の骸骨に近づいた。

アルカディアのオーナーが言ったように、
僕らは2人でそのドクロに触れた…

その時!

骸骨がゴロンと転がり、
「ああ~!」っと思った瞬間、
海水に落ちてしまったのだ…

「どうしよう・・」
冷静に考えよう…

ニュートンの法則、つまり
万有引力にしたがって骸骨は落ちたんだ…

いや、
そういう話じゃない。
形あるものは、いつか壊れる…

いや、
そういう話でもない。

彼女が泣き出した…
「え~ん不吉な事が起こるんだ~来なきゃ良かった~」

そんな事を聞いたら
この僕だって、怖くなっちゃうじゃん…
逃げるか・・・?

…いや、逃げても何も変わらない…
…誰かがここにドクロを置いたんだ…
…置いたということは…
…それは人間の仕業だ…!
…つまり…、
…また置いてやればいいんだよな…。
…そうだ…、
…それに銀色なんて…
…誰かが塗ったに違いない…
…そうだ、そうなんだ…、
…また置いてやればいいんだ…

僕は自分にそう言い聞かせ、
落ちたドクロを捜すことにした。

干潮のおかげで
海の底は良く見えた…
偶然にも
洞窟の穴から日が入り込み
銀色のドクロはすぐに発見できた。
しかし、
足場が悪くなかなか海に入れない…

彼女はそこに座り込んだままだ。
いや、それのほうが都合がいい…下手に動くと転んで怪我をしてしまう…。

僕は早くこの状況から彼女を救ってあげようと
無理して海に入ろうとした瞬間
岩場から足を滑らし
「ドボ~ン」と海に落ちた…

「キャー!大丈夫??」彼女が叫んだ!

『だ、大丈夫!痛たたた…」
落ちた時、足のすねを岩にぶつけてしまい
少し切れたようだが、
それどころじゃない!!
痛みをこらえて
僕はすばやくドクロを拾い上げ、
彼女に向かって投げた…

数分後
なんとか、そこから這い上がり、
彼女と2人で階段の上に
骸骨を戻した…
そして、簡単にドクロが転ばないように
砂と貝殻で固定した…。

そこで、もう一度
改めて、2人でそのドクロを触ることにした…
2人の思い、願いは一つ…

「永遠の幸せをつかむために…」

とりあえず目の前の困難を回避した僕らは
ホッと一息。
その瞬間、足の傷が痛み出した…。
10センチくらい引っかいた傷に
海水が傷に滲み、
さらに乾いてきたからピリピリピリ…
でも、僕は男の子、我慢するのだ!!!

僕らはその場を後にした…。

来た道を戻り
大森君たちと交代…

「滑りやすいから気をつけてね!」

僕はその一言だけを彼に告げ
今あった出来事は
いっさい口にしなかった…。

僕達2人にとっては
とても長い時間を
洞窟内で一緒に居たはずなのだが、
わずか、
27分の出来事だったらしい…。
それにしても
いろいろあった洞窟探検だった…。

ドクロを落としてしまった事を気にして
僕らはアルカディアのオーナーに相談しようと
先程の出来事を伝えた…

すると、オーナーは

「あれは俺が置いたドクロだ!
ドクロに願う勇気があれば、必ず幸せになれると
俺は思うね!
それにしても、骸骨を海に落としたり
怪我をしたりと、
ドラマチックな冒険だったな~
いままでに、そこまでいろいろ思い、考え行動した奴らは
お前さん達くらいなもんだろうな…」

そう言って
僕らにマリンブルーのトロピカルドリンクをご馳走してくれた…。
イスにもたれ掛かり
とても疲れた僕らは
無言のまま大森君たちの帰りを待った…

すると
むこうから、
大森君とななこさん2人は超ご機嫌で
手を繋ぎイチャイチャしながら帰ってきました。

「いやあ~ドクロありましたね~。ちょっと、気味悪かったですよお~」
『大森君ドンドン行っちゃって、ついて行くのが大変でした~でも、一緒に触っちゃいました!ねっ!』

それを聞いて僕と彼女は、なぜか大笑い。
さっきの事は、僕らとオーナーだけの3人の秘密にしておこう…

夕方になると
賑わっていたビーチも
さすがに人が少なくなってきた。

僕は彼女と手を繋ぎ
波打ち際を歩いた…

先程の出来事があったせいか、
今までの僕らより仲良くなれたような気がした…
日常の笑い話や失敗談、
夢や希望や、いろんな事を話した。

突然彼女が僕の前に立ちはだかり
まじめな顔をして
「今日のあなたはカッコ良かったわよ!」

僕はその言葉を聞いて
テレ笑いの隠し場所を探したが
どうにもカッコが付かず、
僕は無言のまま
彼女をそっと抱きしめた…。

夕暮れのサンセットビーチはお互いの気持ちを高ぶらせ
2人でいるという幸せを感じる最高の瞬間だった。

「これもドクロのおかげかな??」

空には星が見え始めていた…

アルカディアの遅いチェックアウトをすませ、
僕らは帰路についた…

途中の湖畔のレストランで遅い夕食をとり
そこからは別々に帰ることになった…
大森君たちも、かなり疲れたようで
自分達のペースで運転していきたいということだった。

もちろん僕の彼女も疲れたはずだ。
先程からず~っと目を閉じたままだ…

僕は車を停め
自販機で買った「リボビタンA」を飲み、
タウリンを100個 体に注入し
最後の力を振り絞り、運転に集中した。

ガランガランと鳴るエンジン音が
教会の鐘の音に感じたのは
僕と彼女だけだろうな…

隣に眠る彼女を横に
僕は星空の下を
走り続けた…

永遠の幸せのために・・。

終わり

(スキー編へと続く・・。)